小林リズムの紙のむだづかい(連載264)

小林リズムの紙のむだづかい(連載264)
清水正への原稿・講演依頼は  qqh576zd@salsa.ocn.ne.jp 宛にお申込みください。ドストエフスキー宮沢賢治宮崎駿今村昌平林芙美子つげ義春日野日出志などについての講演などを引き受けます。

D文学研究会発行の著作は直接メール(qqh576zd@salsa.ocn.ne.jp) で申込むことができます。住所、電話番号、氏名、購読希望の著書名、冊数を書いて申し込んでください。振込先のゆうちよ銀行の番号などをお知らせします。既刊の『清水正ドストエフスキー論全集』第一巻〜第六巻はすべて定価3500円(送料無料)でお送りします。D文学研究会発行の著作は絶版本以外はすべて定価(送料無料)でお送りします。なおД文学研究会発行の限定私家版を希望の方はお問い合わせください。
清水正の著作はここをクリックしてください。

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四六判並製160頁 定価1200円+税

京都造形芸術大学での特別講座が紹介されていますので、是非ご覧ください。
ドラえもん』の凄さがわかります。
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清水正へのレポート提出は  qqh576zd@salsa.ocn.ne.jp 宛にお送りください。


小林リズムさんが八月九日「ミスID」2014にファイナリスト35人中に選ばれました。
http://www.transit-web.com/miss-id/

小林リズムの紙のむだづかい(連載264)
小林リズム
  【スーツ屋での思い出】

  

  スーツ屋でアルバイトをしていたころ、ちょくちょくサボって店舗の入り口の大きな窓から外をぼーっと眺めていた。車のよく通る道路と、ときたま犬を連れた高齢者が歩いているような閑散とした場所で、特に感動するような風景ではなかった。むしろお店の前は風俗店の送迎ワゴンがしょっちゅう止まっていて、車の乗り降りをするお客さんをみては社員の人とよく実況中継をしていた。
「あ、みてみて、あの人もこれからお風呂屋さんに行くみたいだよ」
「わ、ホントだ。平日の昼間からすごいねぇ」
「あ、今車乗った!いってらっしゃーい」
乗り込んでいく人たちはスーツを着ている人が多かった気がする。休日は私服でわたしと近いくらいの年齢の男性もいた。ごくたまにだけれど、お店でトランクスや肌着を購入したお客さんがお店を出てから、そのまま風俗のワゴン車に乗って行ってしまうこともあった。さっきまで朗らかに話していたあのオジサンが。会計をするときにポイントカードを手渡したあのオジサンが。これから真面目な顔をして風俗へ向かうなんて…。
 人の行動の脈絡のなさ、見えるものがすべてでないこと、そして自分の思い込みなども含めて衝撃なことだったのだ。まるでわたしがひとりで牛丼屋に入るときのような心境で、みんな風俗の送迎車に乗っている。当たり前みたいな顔をしつつ、ちょっと緊張した面持ちで。

 そんな光景を見るのが面白かった。動いているものを見て安心していたのだと思う。そしてよく思った。こんなに色んな人がいて、色んな場所があって、色んなものを見れるのに、どうしてわたしは同じところにずっと留まっているんだろう…。当たり前だけれど働いている時間内は店舗から出れず、ずっと同じ場所で同じ窓から外を眺めている。それが時々ものすごく窮屈に感じた。昼間にくすぶっているせいか、仕事が終わったときの気分は一日のなかでも最高潮で、疲れた身体を伸ばしながら外の空気を吸うのがたまらなかった。「わたし、生きてる!」この瞬間のためだったら何でも耐えられるような気持ちにさえなった。大袈裟だけど。


   
 小林リズムのブログもぜひご覧ください「ゆとりはお呼びでないですか?」
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