小林リズムの紙のむだづかい(連載259)

小林リズムの紙のむだづかい(連載259)
清水正への原稿・講演依頼は  qqh576zd@salsa.ocn.ne.jp 宛にお申込みください。ドストエフスキー宮沢賢治宮崎駿今村昌平林芙美子つげ義春日野日出志などについての講演などを引き受けます。

D文学研究会発行の著作は直接メール(qqh576zd@salsa.ocn.ne.jp) で申込むことができます。住所、電話番号、氏名、購読希望の著書名、冊数を書いて申し込んでください。振込先のゆうちよ銀行の番号などをお知らせします。既刊の『清水正ドストエフスキー論全集』第一巻〜第六巻はすべて定価3500円(送料無料)でお送りします。D文学研究会発行の著作は絶版本以外はすべて定価(送料無料)でお送りします。なおД文学研究会発行の限定私家版を希望の方はお問い合わせください。
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四六判並製160頁 定価1200円+税

京都造形芸術大学での特別講座が紹介されていますので、是非ご覧ください。
ドラえもん』の凄さがわかります。
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清水正へのレポート提出は  qqh576zd@salsa.ocn.ne.jp 宛にお送りください。


小林リズムさんが八月九日「ミスID」2014にファイナリスト35人中に選ばれました。
http://www.transit-web.com/miss-id/


小林リズムの紙のむだづかい(連載259)
小林リズム
 【港区のマンションのベランダでコーヒー飲みながら星でも見ようか】  

 

 
 学生のころ、一番初めに内定をもらった不動産屋でインターンをしていたころ、ルームアドバイザーというのをやっていた。文字にすると、綺麗なお姉さんがモデルルームのような会場を歩いて「こちらです、キッチンはこのように収納スペースが…」なんて微笑んで説明しているようなイメージなのだけど、実際はとても地味だった。もちろんコスプレ風の衣装もなければ、新築一戸建てもない。一人暮らしの引っ越しか、カップルが同棲する部屋を探しているパターンが圧倒的に多く、家賃や条件(洗濯機は室内がいいとか、ユニットバスは嫌とか)を聞いていると自然と物件は絞られてきて、選ぶ間もなくあっという間に決まってしまうパターンが多かった。

 そんななか、ペーパードライバーだったわたしは、物件案内のために数年ぶりに運転しろと告げられ、それだけでもう会社を辞めたくなった。そもそも免許を取得するのに人よりもずっと時間がかかったし、運転をするという行為自体がトラウマのようになっているというのに、まったく道もわからない都内で運転なんて…。顔面蒼白なわたしに上司が「大丈夫大丈夫、できるできる」とまるで励みにならないエールを送り、会社用の車のキーを手渡して行って来いと指示する。「マジ、社会人怖い…」と初めて思った。そのときわたし、まだ学生だった。「いやいやホント無理です。お客さんが死んじゃったらどうするんですか。野犬にでも乗せて連れて行ったほうがマシですよ」と必死に懇願し、どうにか助手席に上司を乗せて運転する、というところまで折れてくれたのだった。

 わたしの運転に連れられたお客さんは、渋谷でIT関連の仕事をしているという若い男性だった。わたしと少ししか年が変わらなくて、AKB48の魅力についてひたすら語ってくれた。おかげで意識が逸れ、運転の恐怖から逃れられ、うっかり事故を起こしそうになった。
 案内する物件は港区にある高級マンションだった。彼は部屋に入ると開口一番「これってモテますか?」と聞かれた。質問の意図がわからず、え?と聞き返すと、彼はまっすぐな目で「この部屋、モテますか?」と聞いてきた。そりゃあ、港区だし、デザイナーズマンションだし、打ちっぱなしの壁とか、照明の当たり具合をみると、かなりお洒落な感じだけれど、だからといってモテるとは…。とは思いつつも。わたしはルームアドバイザーの卵。できるだけ高い物件の入居者を見つけるのが仕事。だったら…
「いやぁ、素敵ですよね。こういう部屋に住んでいる人って。憧れますね。女の子はこういうの好きですよ。モテ部屋です!」
とイチオシした。彼にとってはベランダから見える景色が綺麗なことも、キッチンが広くて使いやすいことも一切関係なく、必要な条件は「モテ部屋かどうか」というシンプルな一点で、それを知ったときになんだか可笑しかった。面白い仕事だと思った。彼は今、あのモテ部屋で女の子と星でも眺めているのだろうか。彼に連れられた女の子は、あの部屋に足を踏み入れたときに「わぁ、ステキ!」というリアクションをちゃんとしてあげただろうか。お客様の期待に応えるルームアドバイザーに、一瞬でもなれていたらいい。


 

 小林リズムのブログもぜひご覧ください「ゆとりはお呼びでないですか?」
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