小林リズムの紙のむだづかい(連載244)

小林リズムの紙のむだづかい(連載244)
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小林リズムの紙のむだづかい(連載244)
小林リズム
 【むしろヤだ。】


  あなたのことは好きだけど あなたが好きなあの子は好きになれないよ むしろヤだ。

iPhoneをシャッフルして音楽を聴いていたら阿部真央の『ヤだ』が流れてきた。ひいい…と身震いする。わたしはこの曲がニガテだ。正確にいえば、この曲の歌詞を書いている女の子タイプの子がニガテ。好きな人がいて、その人には他に好きな女の子がいて、だから邪魔なあの女キライ!って言う子は、たぶんわたしのことも嫌いになりそうだから聞くたびに怖い。もちろんわたしがモテて女の敵をつくるから、というわけではなくて、単純に嫉妬心が男性へではなく女性へ向かう現象が。それも当たり前のことのように「あの子は好きになれない むしろヤだ」と告白し、多くの女子から共感を得てしまっていることが、女って嫌だなぁと思ってしまう原因なのだと思う。自分も女だからなおさらなのかもしれない。
 たぶんこの曲に7割以上の女子が共鳴しているんだろうな。「あの子、なんか鼻につくよね、イヤな感じ。ああせつない、あんな女よりアタシのほうがいいのに、どうしてわからないの…!あの女め!」…恨むなら自分のことを好きにならない男に牙を立てればいいのに。恋愛では傷ついたほうが偉いというルールがあるように周りの女子も騒ぎたてて同情する。「みーちゃんかわいそう…ずっとマサル君のこと好きだったのに…」なんて面倒くさいんだろう。そんなふうにして女に嫉妬する女を「素直でカワイイ」なんて思えない。
 …という話を女友達にしてみたところ「冷たい!」「わかってない!」と大ブーイングされた。
「なんであの切ない気持ちがわからないの?好きな人を恨めたらラクだけど、それができないから女に向かうんじゃん」
…ということらしい。
「だったら好きになってもらえない自分を恨めば」
「自分が一番傷ついてるのに、これ以上自分を追い詰めるとか意味わかんない!」
…そっか。女心を理解できてなかったよ…。

 けれど考えてみれば、男性に厳しく女性に優しいタイプの女友達も結構いる。彼女たちは共通してあまり男ウケのよろしくない我の強さを持っていて、トラブルがあると真っ向から男に立ち向かう。たとえばわたしが飲み会で酔っ払ってしまったとしても「つまらない会にした男が悪い」「飲ませる男が悪い」とバッサリと言い切ってかばってくれる。男性からしたら理不尽かもしれない。かといって同性に媚びているわけでもなく、単に女である自身のことが好きでたまらないように見える。だから自分と同じ性別を持つ女性に対しては素晴らしく寛大。
 一方で男ウケのいい我の強さを持っている女子は、女に嫉妬することがありつつも連帯感を結び、うまく共存する。男性に対して可愛いワガママやお願いをする能力に長けている。常に男性を意識しているから下品な我の強さにはならない。そういうタイプの子のほうがすいすい世を渡っていくんだろうなぁ。でも阿部真央のストーカーの唄は好きだようん。

 
   

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