ユッキーの紙ごはん(連載22)
清水正への原稿・講演依頼・レポート提出は qqh576zd@salsa.ocn.ne.jp 宛にお申込みください。ドストエフスキー・宮沢賢治・宮崎駿・今村昌平・林芙美子・つげ義春・日野日出志などについての講演を引き受けます。
ここをクリックしてください。清水正研究室http://shimi-masa.com/
四六判並製160頁 定価1200円+税
京都造形芸術大学での特別講座が紹介されていますので、是非ご覧ください。
『ドラえもん』の凄さがわかります。
http://www.youtube.com/watch?v=1GaA-9vEkPg&feature=plcp
清水正へのレポート提出は qqh576zd@salsa.ocn.ne.jp 宛にお送りください。
ユッキーの紙ごはん(連載22)
【きみには味がないね】
ユッキー
少し前から、味玉作りにはまっている。
味玉って何かというと、ただ単に、醤油ベースのタレにゆで卵を漬け込んだものだ。ラーメン屋さんのラーメンに入っていたりする茶色のゆで卵が理想像。
白身にはわりとすぐに美味しそうな色が付く。でも1日程度では黄身にまで味が染みこんでいない。漬けてから2,3日後あたりが黄身まで味が染みていて、いちばん美味しい気がする。それ以上になると、好みにもよるが、ちょっとしょっぱい。
味玉はなかなか優れもので、ご飯のおかずにはもちろん合うし、ラーメンとかうどんなどの汁物に入れるとちょっとした贅沢気分だし、細かく割ってサラダと一緒に食べても美味しいし、父のビールのおつまみにもなる(断じて私のおつまみではない、そんなに酒飲みじゃない……)。
ただタレ作りが少しだけ厄介。味噌を入れてみたり、白だしを入れてみたり、すきやき用の割り下を入れてみたり、お酒を入れてみたり、辛子を混ぜてみたりと、いろいろ試行錯誤しているのだけど、どうも味が……なんというか硬い。「ぼく醤油だよお! 出来合いの白だしも入ってるよお!」みたいな要らん自己主張をしてくる感じ。理想であるラーメン屋さんの味玉とは違う。
まあ、一応美味しいから……と妥協していたところ、先日母が大根と鶏の手羽元の煮込みを作ってくれた。その煮汁には鶏のダシがよく出ていてとても美味しかったので、さっそく味玉を漬けてみた。
そして次の日に味見。
違う。私が作っているタレとは全然違う。まろやかで、塩辛い感じがまるで無く、それでいて味がしっかりしている。美味しすぎて兄の分を取り置かずに食べた(ごめん。でもゆで卵を作ったの私だから!)。
やはり肉と骨が一緒に茹でられていると旨味が違う。こんなに美味しいものを食べないなんてベジタリアンの人は我慢強いなあとよくわからない方向に思考を飛ばして感心しつつ、そうだよね……肉と骨があるのと無いのじゃ味が全然違うよね……とヘコんできた。
もう来月には就活が始まる。自己分析だとか、夏のインターン選考に使った志望理由や自己PRだとかを書いた自分の文章を思い出し、書いたその時「なんか違う」「こんなのでいいのかなあ」と不安になっていた理由がわかった。
ダシがないんだ。肉と骨が入ってない。確固たるものが無い。
出来合いの言葉を連ねているから、それらしくは見えても、味が無い。「どう!? ちゃんと就活してるでしょー!? ね! ね!?」と情けない自己主張が透けて見える。ああ……。
これから苦しんで身を削っていくことができれば、私からも少しはダシが出るのだろうか。
※肖像写真は本人の許可を得て撮影・掲載しています。無断転用は固くお断りいたします。