ユッキーの紙ごはん(連載20)
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ユッキーの紙ごはん(連載20)
【おまじないは万能じゃない】
ユッキー
ツポビラウスキー症候群。
ピンときた人は私と漫画の趣味が合うと思います。
『Q.E.D. 証明終了』という推理漫画のある一話は、こんな話で始まる。
昔、まだ街灯も何もなかった頃、人は闇が怖かった。だから闇の中に妖怪を夢想し名前をつけ、恐怖を和らげた。名前を付ければ闇を封じることができる、と。
そして推理漫画らしく事件があるのだけど、自分が犯した殺人に酔いしれる犯人に向かって、登場人物の一人である医師は「お前はツポビラウスキー症候群だ」と告げる。
「無秩序を得意がり、人を傷つけることに喜びを感じる。世界中で発症している典型的な症状だ」
医師はこう言って、自分を特別だと恍惚に浸る犯人の思い込みを壊す。誰かを攻撃する自分を特別だと誇るな、ありきたりな病気だと。
そんな彼は、主人公達に「ツポビラウスキー症候群は、闇を封じ地獄に落とすまじないだ」と説明する。
名前を付けてしまえば、闇は闇でなくなる。
最近、本当にいろいろな造語が出回っている。
「中二病」、派生して「小二病」「大二病」、「メンヘラ」「ヤンデレ」「ツンデレ」、「どや顔」、独特な絵と斬新なネタで流行したブログ『地獄のミサワ』から取った「ミサワ」、あるいは「リア充」「キョロ充」「ぼっち」……など。
こうした造語や、またその由来となる現実のあるあるネタは、たしかに面白い。よく観察してるなあとか、言い得て妙だなあと笑うこともある。
けれど、多用されすぎるのもどうなんだろうと、自省も込めて思う。
たとえば、俳優が得意げな笑みや真剣な表情を見せれば「どや顔」、アンダーグラウンドな世界や自分物を描いたものがあれば「中二病」、恋愛に真剣になっている女の子がいれば「メンヘラ」。
映像作品でも文学作品でも現実でも、自分が共感できないものにすぐ何かしらの名前をつけて、記号化して笑う。そうやって言葉を使っている場面をよく見かけるようになった。
闇は闇で取っておいたほうがいいこともある。闇が全く無くなったらそれはそれでつまらないし、それに、知った気で中途半端に闇を照らして見てみたらとんでもないものが出てきてパクリとやられてしまうかもしれない。
他人が造った言葉を使って闇を封じた気になっていると、いつか痛い目を見そうな気がする。
なんてことを、日が落ちるのが早くなってきた最近、思うのだった。
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