小林リズムの紙のむだづかい(連載199)

清水正への原稿・講演依頼は  qqh576zd@salsa.ocn.ne.jp 宛にお申込みください。ドストエフスキー宮沢賢治宮崎駿今村昌平林芙美子つげ義春日野日出志などについての講演などを引き受けます。

D文学研究会発行の著作は直接メール(qqh576zd@salsa.ocn.ne.jp) で申込むことができます。住所、電話番号、氏名、購読希望の著書名、冊数を書いて申し込んでください。振込先のゆうちよ銀行の番号などをお知らせします。既刊の『清水正ドストエフスキー論全集』第一巻〜第六巻はすべて定価3500円(送料無料)でお送りします。D文学研究会発行の著作は絶版本以外はすべて定価(送料無料)でお送りします。なおД文学研究会発行の限定私家版を希望の方はお問い合わせください。
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四六判並製160頁 定価1200円+税

京都造形芸術大学での特別講座が紹介されていますので、是非ご覧ください。
ドラえもん』の凄さがわかります。
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清水正へのレポート提出は  qqh576zd@salsa.ocn.ne.jp 宛にお送りください。


小林リズムさんが八月九日「ミスID」2014にファイナリスト35人中に選ばれました。
http://www.transit-web.com/miss-id/


小林リズムの紙のむだづかい(連載199)
小林リズム
 【部屋と卵焼きとあなた】


 
「同棲していた恋人に別れを告げられて、その人の家を出ていくときにね、鍵と卵焼きを置いておくの」
という話を聞いた。なんでも、彼女のつくる卵焼きには小エビやキャベツが入っているオリジナルで、とても美味しいらしい。確かにシャキシャキした歯ごたえと小エビの彩りを想像するとお腹が空いてくる。卵焼きは甘いのがいいとか、反対にしょっぱいのがいいとか、人それぞれの好みがあるのでその人らしい味が出る気がする。
「そうすると、残された彼が“もうこの卵焼きは食べられなくなるのか…”って後悔するんだよ」
なるほど。仕事帰りに家に帰ってきて、彼女がいなくなって広くみえる部屋。机には、鍵と卵焼き。長細いお皿にのった卵焼きには丁寧にラップがかけられていて、その小さな気遣いがまたひとつ寂しい。置手紙はない。あるのは、卵焼きだけ。
「“反則だよ”ってメールが届いて、そのあと復縁迫られたもん」
男は胃袋でつかめ、とは聞くけれど、去り際にまで胃袋を手放さないあたりが重要なのかもしれない。あなたの胃袋、わたしがつかんでいたのよ?忘れちゃったの?それじゃあ、思い出させてあげる…。と余韻を慎ましく残す卵焼きの存在感。恐れ入ります…。

 単純に卵焼きで復縁、と聞くと“胃袋をつかんで復縁?まさかぁ…”と思いがちだけれど、こうやって相手の五感に攻め入るのってなかなか効果的なのかもしれない。たとえば、嗅覚は人の記憶を呼び起こすといわれているけれど、街中で通りすがった人の香水のにおいをかいで、ふとあの人を思い出す…みたいなシーンはよく描かれているし、実際にある。ラジオから流れてきた懐かしい曲も“あの人と聴いたなぁ…”と思い出したり、“これは高校生のときの文化祭のときにかかってた”などとある一定の期間内に起きた出来事として思い起こしやすい。

 言葉や行動も、人の心に残ることはあるけれど、五感で何かを感じさせること、実際に見たり聞いたり、食べたり、飲んだり、触ったり、嗅いだり、を共有することって思っていたよりもずっと大きいことなのかもしれない。とりあえず手始めに、いつか誰かと一緒に食べるためのオリジナルの卵焼き、考えよっと。

小林リズムのブログもぜひご覧ください「ゆとりはお呼びでないですか?」
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