小林リズムの紙のむだづかい(連載192)
清水正への原稿・講演依頼は qqh576zd@salsa.ocn.ne.jp 宛にお申込みください。ドストエフスキー・宮沢賢治・宮崎駿・今村昌平・林芙美子・つげ義春・日野日出志などについての講演などを引き受けます。
D文学研究会発行の著作は直接メール(qqh576zd@salsa.ocn.ne.jp) で申込むことができます。住所、電話番号、氏名、購読希望の著書名、冊数を書いて申し込んでください。振込先のゆうちよ銀行の番号などをお知らせします。既刊の『清水正・ドストエフスキー論全集』第一巻〜第六巻はすべて定価3500円(送料無料)でお送りします。D文学研究会発行の著作は絶版本以外はすべて定価(送料無料)でお送りします。なおД文学研究会発行の限定私家版を希望の方はお問い合わせください。
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京都造形芸術大学での特別講座が紹介されていますので、是非ご覧ください。
『ドラえもん』の凄さがわかります。
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清水正へのレポート提出は qqh576zd@salsa.ocn.ne.jp 宛にお送りください。
小林リズムさんが八月九日「ミスID」2014にファイナリスト35人中に選ばれました。
http://www.transit-web.com/miss-id/
小林リズムの紙のむだづかい(連載192)
小林リズム
【可哀想でせつない】
小学生くらいのころ、家族でハワイへ旅行に行った。計画性抜群、我が家の歩くガイドブックである母は、わたしがあげた小さなノートにびっしりとお勧めスポットやホテルの名前、マップなどをメモしていた。
旅行中、家族でレンタカーに乗り、海を目指していた。しかし英語で文字が書かれた地図や異国の道なりがいまいちわからず、道に迷ってしまった。苛々したお父さんが車から出たとき、母は自分でつくったガイドブックをずっと見ていた。いまだにそのときのシーンが頭から離れない。言いようのないくらいに寂しかった。一生懸命に計画を立てた母が、報われなかった母が、可哀想だった。お母さんが可哀想だと、子どもは切ない。たぶん、あのときほど母のことを「お願いだから幸せにしてあげて!」と祈ったことはないと思う。
わたしはときどき、自分のために泣く。それも、リアルタイムな“今の自分”のためではなくて、頑張ったり、何かに期待をしていたころの“過去の自分”のために。あのとき頑張っていた自分が可哀想、期待していた自分が可哀想…と、心の中で同情する。次第に同情だけでは足りなくなって、“あんなに頑張ったのに報われない今でごめんねぇ”とあやまりたくなってくる。でもそうなるのは、過去の自分が可哀想だからではなくて、今が満たされないからなのだ。過去の自分は未来の自分のことなんてお構いなしに、努力したり希望を持ったりしているのだから、それがうまくいかないからといって悲しむ必要はない。だから、今の欠けている自分に思う存分没頭して、悲しんであげればいい。
でも小学生のわたしはそれができなかった。リアルタイムで悲しんでいる母を前にしても、励ますことどころか声をかけることすらしなかった。ただ吸い込まれていくように切なくなっただけだ。「お母さん、頑張ってみんなの旅行のためにたくさん調べたのに、かわいそう…」それと同時に9歳のわたしはなんだか無性に腹が立ってきた。お母さんが報われないこと、そしてわたしを切なくさせる、この世界に。
そうでなくても傲慢なわたしは世界は自分が中心に回っていると思っていたから、あのときほとんど初めて真剣に、どうにもならないという現実を目の当たりにしたのだった。それは「ああ、どうにもならないんだ…」と力の抜ける諦めではなくて「どうにもしてくれないのね!」という八つ当たりをするような気持ちだった。そしてその気持ちは22歳になった今も続く。わたしは“どうにもならないこと”に諦めがつかない。もしかしたら死ぬまでつかないかもしれない。というより、死ぬことにさえ納得いかないかも…。そしてこの諦めのつかなさこそが自分をややこしく、楽しくさせているものかもしれないと、ちょっとだけ思った。
小林リズムのブログもぜひご覧ください「ゆとりはお呼びでないですか?」
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