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星エリナのほろよいハイボール(連載24)
部長決め総選挙に出馬できない
いろいろと問題ごとを起こしてきた我らが吹奏楽部。まず根本的に、三役が代わる代わる代わった。三役というのは、所謂役職のことで、部長、副部長、学生指揮者の三人だった。部長は先輩が決めてくださり、引退式の日に引き継がれる。
私たちの代の部長はホルン吹きの大人しい女の子だった。部長が発表されたとき、顔面だけで静かに驚愕していたので、わかりやすくサイレント部長と名付けよう。サイレント部長率いる新星吹奏楽部がスタートしてはや三ヶ月。毎週土曜日は部活があり、私はサイレント部長ともう一人と学校へ登校していた。がしかし、土曜日にサイレント部長が来ることはなくなった。土曜日の朝になると腹痛が起きるらしい。その後、病院へ行き診察してもらうとストレス性の腹痛と診断された。サイレント部長は吹奏楽部をやめていった。
二代目部長は副部長だった私と同じクラリネットパートの女の子。動きが常に変だから、挙動不審部長と名付けよう。挙動不審部長は何事にも一直線で、努力家なんだけれど不器用な子だった。楽天的なところもあったから、悪いことを誘われてもラッキーとしか思わなかったりする。だけどそれが悪いことだと気がつくとものすごく落ち込み泣いて悩んで謝罪を繰り返すような子だった。そんな彼女は部員と先生の間に挟まれ一人で悩み、吹奏楽部をやめる決意をした。彼女が退部を決意した日の朝、私は偶然パートノート(クラリネットパートの記録)を見つけてしまった。彼女の思いが綴ってあるそれを見て、私は彼女を外階段の一番上に呼び出した。
「なんで何も言わずにやめるの?」
「……つらかった」
彼女はそれ以上言ってくれなくて、二人で泣いて、私はその日ずっと、授業中もずっと、泣いていた。一年生のころから一緒のパートで頑張ってきた子だったから、相談もされなかったことが悔しくて、泣き続けた。
そんなこんなで三代目部長を決めるときがきた。なんと、誰がいいか選挙をするという! そしてその選挙当日、音楽室では一人ずつ投票をしていたらしい。らしい、というのは私がそこにいなかったからだ。なんと生徒総会のリハーサルのため体育館にいた。本橋先生が入ってきて「少し星さん借ります」と言われ、体育館の隅っこでお話をした。そして、投票結果を見せられた。サックス奏者のガリ細さんが優勢。というか、私票入ってないんだ……。と思っていると、先生は「あなたは生徒会だから票入れないようにした」とか。あ、私出馬すらできていないのか! 彼女でいいと思う? と聞かれ、頷いた。
ということで、部長決め総選挙を勝ち抜いたのは彼女をガリ細部長と名付けよう。副部長にはフルート奏者ののっぽさん。ちなみに私は一番最初から学生指揮者だったのです。部長や副部長が代わっていくなか、ずっと合奏を仕切っていた。
今話題の総選挙、なんでもいいから出てみたかった。
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