星エリナのほろよいハイボール(連載23)

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星エリナのほろよいハイボール(連載23)

  女子トイレに呼び出した
 
 無駄に女生徒の上下関係が厳しい我が中学校。特に厳しいのが女子テニス部とわれらが吹奏楽部だった。吹奏楽部を文化部だと思っていらっしゃるでしょう。超体育会系な部活です。返事はどの部活より大きい。私の中学の吹奏楽部は顧問の本橋先生のもと、合唱もしていた。呼吸法がしっかりなっていなければ良い演奏はできない。呼吸法の一番良い身につけ方が合唱、ということだったらしい。というか、本橋先生の専門が合唱だったためだ。そんな私たちは発声法まで身につけ、完璧な腹式呼吸での合唱を毎日練習していた。おかげで返事もでかい。
 私が一年生のころからだが、クラリネット1stは返事が人一倍でかい。返事も複式呼吸でやれ、と言われ、先輩にみっちり指導されるのだ。先輩におなかとせなかを両手で挟まれ、返事の練習をする。返事のたびにおなかがへこまないと、なってない!と怒られるのだ。
 とにかく上下関係が厳しい吹奏楽部だが、私たちの代は異常だったと思う。私は生徒会室でサッカーとかしていたのだが、たまに顔を出すと部長たちに呼ばれる。
「一年生の○○さんのスカートが短いんだよね。星さん、注意してくれない?」
 はぁ。まぁその他いろいろ、注意するのは私の役目になっていた。ちなみに吹奏楽部での役職はない。生徒会室で遊んでいるような先輩に怒られたくないだろうなーと思いつつ、三年生の不満を後輩に言っていた。
 ある日の朝練習後、教室に行こうと思っていたら、まだ三年生が音楽室に残っていた。見ていると四人くらいで女子トイレに入っていった。その後、一年生が三人、そのトイレに入っていった。え、なにごと? と思って残っていた部長と私はその後を続いてトイレに入った。
 なかでは三年生が一年生を怒っていた。とにかく理由を聞くと、吹奏楽部の一年生三人組が、ソフトボール部の女の子をいじめている、という情報を三年生が掴んだらしい。同じ部活の先輩として、そういうのは許せない、というのだ。まぁ、別に、いいんじゃない。いやでも、あなたたち、一年生のころ吹奏楽部の女の子のこと、いじめてたよね。あれも結構問題になったよなー。
 とか考えている間に説教ははじまっていて、部長は弱気な子(実は三代目の部長)だったので何も言えずにおろおろしている。そのうち予鈴が鳴ったけれど説教はやめようとしないし、一年生は泣きだした。あ、これはまずい。
「まーまーまーとりあえずさ、いじめてたのかどうかの事実はともかく、こういう話が三年生の耳に入ったってことはさ、それっぽいことが少なくともあったんじゃない? 火のないところには煙はたたない、みたいなね」
 テキトーなこと言って一年生と三年生を納得させて、とにかく教室へ戻りたかった私。だって私の担任は本橋先生。こんなことバレたら即事情聴取だ。
 まぁ結局、一年生を教室へ行かせたときには本鈴が鳴っていて、遅刻扱いになってしまったため、バレた。最初はものすごく怒られたが、まぁなんとかわかってもらえた。
 しかし女子トイレに後輩を呼び出すなんて、面白いシーンを見ちゃったなー、と楽しんでいた私がいた。  


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