インドネシア訪問(5)

九月五日、南ジャカルタ国際交流基金ジャカルタ日本文化センターでの国際シンポジウム「文学とマンガ」第二日目、二番手の講演者は山下聖美先生(日芸文芸学科准教授・林芙美子研究家)、テーマは「アジアの中の林芙美子である。山下先生は今回のシンポジウムの仕掛け人のひとりで、インドネシア大学の先生方とも親しく研究交流している。司会と通訳を担当したスーシー博士、会場に学生とともに参加していたカズコ博士とも親しい仲である。今回のシンポジウムが緊張のなかにもなごやかな雰囲気に包まれていたのも、そういった人間関係があったからである。
山下先生は林芙美子研究をライフワークとしている。近年は「アジアの中の林芙美子」を追って、満州ベトナム、サハリン、台湾、インドネシアを訪問している。今回はそういった研究成果を踏まえてわかりやすく報告された。林芙美子は放浪の小説家、行動する小説家であった。書斎に閉じこもって作品を執筆する小説家というよりは、絶えず何かに駆り立てられてアジアを、ヨーロッパを旅した小説家であった。山下先生もまた行動する研究家で、眼差しはいつも世界に向けられている。