ユッキーの紙ごはん（連載13）

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ユッキーの紙ごはん（連載13）

【壊したいものも壊せないこんな心じゃ】
ユッキー

「クラッシャー」。主に就活のときによく聞く単語だ。
どういう意味かと言うと、就活やその前準備となるインターンシップの選考ではグループディスカッション（ＧＤ）というものが行われることが多いのだけど、そのグループ内での議論をぶち壊してくる大迷惑な人種のこと。
要するに、悪口。

（私もまだそんなに経験しているわけではないので受け売りだけど）ＧＤにおいては、グループで自然と役割分担がなされ、皆で意見を出し合い、しかし相手の意見を否定することなくスムーズに、時間内でグループの総意をまとめなければいけない。争っている時間はない。

だからどうしても自分の意見を通らないのが気に食わないのなら、拗ねて黙って一人で落選してくれればいい。そうすれば「クラッシャー」とは言われない。なのに最後まで文句を言い続けて絶対に譲らず、グループの結論を出すことを妨害し、グループ全員を引きずり落とす人間が一定数いるらしい。これが「クラッシャー」。

「らしい」と書いたとおり、またこれも前述したがまだそんなにＧＤを経験していないからか、私はいまだに「クラッシャー」に遭遇したことはない。それっぽい人はいたことがあるが、彼は有り難いことに「クラッシュ」寸前で引いてくれた。
　つまり私はまだ「クラッシャー」の迷惑を被ったことがなく、だからなのかもしれないが、この言葉の響きが大好きだ。かっこいい……。クラッシャー。なんかこう、ダークヒーロー的な響きを秘めている。ジョーカー、みたいな。

「クラッシャー」には２種類のタイプ、無自覚クラッシャー（自分に正直な結果グループクラッシュ）と自覚クラッシャー（気に食わないからお前ら全員ぶち壊してやるぜヒャッハー）がいるのだが、前者はストレートに「コミュニケーション能力不足型」、後者を「ダークヒーロー型」と名付けたい。

いいなあ、ダークヒーロー型クラッシャー。呼ばれたい。同じグループの人や面接官の人から、「なんだこいつ……」という視線を真っ向から受け、更にはグループごと落選させてみたい！グループの皆がお通夜ムードで「ありがとうございました……」と暗い顔で面接官にお礼を言っているところ、元凶である私はヘラヘラしていたい。うへへ。

こんなふざけたことを言うのは、しょせん私にはクラッシャーになる才能がないからだ。クラッシュしようとして自己主張しても、高学歴の人やリーダーシップのある人に「いやそれって論理的じゃないですよね？」なんて言って遮られたら、「あっ、そう、かもしれないです…すみません……」と小さくなって何も言えなくなる小心者。
ダークヒーローに過度に憧れるのは小心者だと、昔から相場が決まっている。

そして私のような小心者は、クラッシャーになれたとしても、絶対に無自覚、コミュニケーション不足型。
　小心者はダークヒーローになれない。

手が届かないから憧れるのだと、昔から相場が決まっている。

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