紙のむだづかい(連載160)

清水正への原稿・講演依頼は  qqh576zd@salsa.ocn.ne.jp 宛にお申込みください。ドストエフスキー宮沢賢治宮崎駿今村昌平林芙美子つげ義春日野日出志などについての講演を引き受けます。

D文学研究会発行の著作は直接メール(qqh576zd@salsa.ocn.ne.jp) で申込むことができます。住所、電話番号、氏名、購読希望の著書名、冊数を書いて申し込んでください。振込先のゆうちよ銀行の番号などをお知らせします。既刊の『清水正ドストエフスキー論全集』第一巻〜第六巻はすべて定価3500円(送料無料)でお送りします。D文学研究会発行の著作は絶版本以外はすべて定価(送料無料)でお送りします。なおД文学研究会発行の限定私家版を希望の方はお問い合わせください。
清水正の著作はここをクリックしてください。

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ここをクリックしてください。清水正研究室http://shimi-masa.com/


四六判並製160頁 定価1200円+税

京都造形芸術大学での特別講座が紹介されていますので、是非ご覧ください。
ドラえもん』の凄さがわかります。
http://www.youtube.com/watch?v=1GaA-9vEkPg&feature=plcp



清水正へのレポート提出は  qqh576zd@salsa.ocn.ne.jp 宛にお送りください。
小林リズムの紙のむだづかい(連載159)

小林リズムさんが八月九日「ミスID」2014にファイナリスト35人中に選ばれました。
http://www.transit-web.com/miss-id/


紙のむだづかい(連載160)
小林リズム

【命短し恥かけ乙女!】
 

 韓国人留学生のひーちゃんと一緒にご飯を食べに行ったとき、小さくて愛らしい店員さんにむかって「この女、カワイイー」と言っていてギョッとしたことがあった。街中でモデルさんのような女性を見かけたときも「あの女、キレイだねー!」と言ったりするので、そのたびにドギマギしてしまう。上品な彼女の顔立ちから発せられる「あの女」発言に男らしささえ感じてくるのだった。「日本では“あの女”じゃなくて“この子”とか“女の人”って言うんだよ」と伝えたのだけど、えぇ、どうして?とあまり納得していないようだった。たしかに「あの女」だと乱暴な感じがするのはどうしてだろう…?

 日本にやってきて6年。大学で優秀な論文を書いて賞をもらった、これまた韓国人留学生のねーさんは、べらぼうに日本語がうまい。話す言葉も、書く文章も、ボキャブラリーが豊富で一緒にいると日本人ではないことを忘れてしまう。そんな勉強家で真面目な彼女が、日本語学校に通い始めた頃のエピソードを教えてくれたのだった。そのときちょうどパルコのなかのもつ鍋屋さんでご飯を食べていたのだけど、唐突すぎる下品な内容にわたしはこみあげてくる笑いがおさまらなかった。

 ひとつの教室に20人くらいの生徒が集まる日本語学校の授業では、毎回教わった言葉をつかって「最近あった出来事」をひとりずつ発表していたらしい。内容はどんなことでもよくて“納豆を食べマシタ。老けた豆みたいだと思いマシタ”という、ささいな出来事でいいらしい。その日に教わった言葉は“一生懸命”だった。ねーさんは悩んだあげく昨日の出来事を話そうと思い、それこそ一生懸命に発表したのだった。
「昨日、電車でおなかが痛くてオナニーをしたくなりました。我慢できず一生懸命バレないようにしマシタ」
堂々としたねーさんの言葉にびっくりして手が震える日本語学校の先生(当時42歳の女性)。日本語初級コースの教室だったため、まわりの生徒は単語自体が理解できず、なぜ先生がそんなに目を白黒させているのかわからなかったらしい。
「なんでなんで…」とか細い声で顔を赤らめておろおろする先生に「だっておなか痛かったから。クサいやつ。出そうで」という言葉を繰り返すねーさん。数十秒の沈黙の結果、先生は突然ひらめいたように「それは、オナラです!」と叫んだのだった。「ニー、ではなく、ラです!絶対に間違えないでください」と連呼する彼女に、ねーさんは疑問に思った。それなら、わたしが言った単語はどういう意味だったんだろう?

 もちろん学習意欲あふれるねーさんは家に帰って辞書で調べた。旧式タイプの辞書だったらしくそこには載っておらず、ネットで検索したらしい。その単語の意味を知ったとき「あらまあ…!やってシマッタ…!」と思ったとか。そりゃそうだ。やってシマッタどころの騒ぎではない。電車で発情してしまうのもすごいし、そんなことを授業で発表するのもすごいしで、先生はさぞかしリアクションに困ったに違いない。まさか勉強熱心で真面目な彼女が冗談でそんなことを言うとも思えなかったのだろう。ちょっと単語を間違えるだけでまったく違う意味で通じてしまう日本語の威力よ…。
「まあそういう時期があったから、今のわたしがいるわけ」
とけろっとした表情で自信満々に言い放つねーさんを前に、恥ずかしい失敗ってたくさんしておくべきだなぁと、勇気をもらった気持ちになったのだった。…と、ここまで書いて気づいた。衝撃が強くてつい突っ込み忘れていたけど、そもそも「電車でオナラをしそうになって我慢できずにバレないようにした」っていう出来事をみんなの前で発表をしようとする心意気がまず、特異なんじゃなかろうか…。
 
 

小林リズムのブログもぜひご覧ください「ゆとりはお呼びでないですか?」
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