小林リズムの紙のむだづかい(連載159)

清水正への原稿・講演依頼は  qqh576zd@salsa.ocn.ne.jp 宛にお申込みください。ドストエフスキー宮沢賢治宮崎駿今村昌平林芙美子つげ義春日野日出志などについての講演を引き受けます。

D文学研究会発行の著作は直接メール(qqh576zd@salsa.ocn.ne.jp) で申込むことができます。住所、電話番号、氏名、購読希望の著書名、冊数を書いて申し込んでください。振込先のゆうちよ銀行の番号などをお知らせします。既刊の『清水正ドストエフスキー論全集』第一巻〜第六巻はすべて定価3500円(送料無料)でお送りします。D文学研究会発行の著作は絶版本以外はすべて定価(送料無料)でお送りします。なおД文学研究会発行の限定私家版を希望の方はお問い合わせください。
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四六判並製160頁 定価1200円+税

京都造形芸術大学での特別講座が紹介されていますので、是非ご覧ください。
ドラえもん』の凄さがわかります。
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清水正へのレポート提出は  qqh576zd@salsa.ocn.ne.jp 宛にお送りください。
小林リズムの紙のむだづかい(連載159)

小林リズムさんが八月九日「ミスID」2014にファイナリスト35人中に選ばれました。
http://www.transit-web.com/miss-id/



紙のむだづかい(連載158)
小林リズム

【貧乳を愛することを誓います!】
 

  
 突然だけれど、ついこの間、21歳のときまでわたしは「乳輪」を「チチワ」と読んでいた。文字で目にすることしかなかったから、自然と頭の中で「チチワ」と変換されていたのだ。チチワっていうとなんだか牛みたいで、存在感があって、ちっとも色っぽくなくて、そこがいいなと思っていたのだ。どうよ、何か文句ある?みたいな強気な攻めの発音、チチワ。
 本当の読み方を知ったのは脱毛サロンに行ったのがきっかけだった。待ち時間にサロンのお姉さんがくっきりとした営業スマイルを浮かべて「指毛、おへそ周り、ニュウリン、どれかを無料で1回お試しできますよ」と言っているのを聞いたからで、そのときわたしはお姉さんが何を言っているのかよくわからなかった。ニュウリン?なんだそれ?と思いながら、脱毛サロンの案内を眺めていると、そこに「乳輪」の言葉があったので、そうか、これはチチワじゃないのか…!とびっくりした。けっこう、衝撃的だった。チチワよりも「ニュウリン」のほうが、聞き心地としては色気があるし、特にリンという部分が涼やかで謙虚なイメージになるしで、読み方とか音って大事なのだなぁとしみじみしたのだった。

 ところで、乳輪が大きいとか小さいとか言い出したらきりがないけれど、そのなかで「貧乳は乳輪が小さい!」という言説があるみたいで、なるほどそうだろうなぁと思った。男性で乳輪が大きくて悩みですっていう人、聞いたことがない。乳輪が500円玉より大きいかとか小さいかとかお水系の職業ではよくネタになると聞いたことがあるけれど、やっぱり見えないものは気になるのだろうか。美乳の定義も大きさだとか形だとかで基準がよくわからないのに、それに加えて乳首とか乳輪とか言い出したらきりがない。そんなの好みだし、千差万別、みんなちがってみんないい。で、完結してほしい。

 そんなこんなであいかわらず大きな胸を見つけると、ついつい尊敬と羨望のまなざしで見てしまう。彼女たちはうつぶせで寝られるのだろうかとか、両手で何かを渡すときに胸が邪魔になったりしないのかとか、気になってしまう。チヤホヤされることと引き換えに、胸の大きい人たちもそれなりに苦労があるのだ。けれどそれさえ、いいなぁと思う。わたしも胸の取り扱いに悩みながら生きてみたい…。
 そんなふうに思って温泉に入ってみたら、かつてはかなりの巨乳だったのだろう90代くらいの老婆がいた。胸のなかがしぼんでしわしわになっていて、皮膚が長くのびきっていて、「わたしゃ無事に役目を果たしたのよ…」と言われているようだった。とにかく、長いのだ。カウボーイみたいに胸を振り回せそうなくらいに長い。頭を下げて髪の毛を洗うときに胸が邪魔になるのは間違いないだろう。いっそのこと「せいやっ」と肩にかけられるのではないかと思う。わたしは老婆の胸を見ながら、人間ってすごいよなぁと思った。今は水をはじく肌も、時間の経過とともに必ず老いていく。あるのは、この瞬間だけなのだ。そうだ、この瞬間だけ。そう思ったら、貧乳の胸とはいえ今しかないこの瞬間を、きちんと可愛がってあげたいなぁと思うのだった。未熟でもできそこないでもいいや。今しかない自分のことも人のことも、全身全霊で可愛がってあげよう。そしたらきっと、役目をまっとうしきったあの老婆の胸みたいに、後悔は残らないはずだ。


 

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