ユッキーの紙ごはん(連載10)

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ユッキーの紙ごはん(連載10)


【口うるさい幽霊】

ユッキー



夏!
ということで、お化け屋敷に行ってきた。

夏休み、しかもお盆のあたりに行ったので、家族連れや小学生グループの多いこと多いこと。待ち時間10分は大嘘で、30分は待った。(でもそのおかげでカップルの比率が予想以上に低かったため、私の心は荒まなかった。子どもたち、ありがとう。)

チケットを買って並んでいると、スタッフの人が説明しに来た。ストーリーは、廃校になった学校に4人の幽霊が出るというもの。そこから1人を選び、ヒトガタという紙をゴール前にある彼らの写真の前に供え、「成仏してください」と唱えろ、というのがコンセプトだった。
そこまでは良かった。4人の幽霊の設定も怖いし、ただ進むだけではなく自分たちでミッションをこなさなければいけない、というのも怖い。

ところが、スタッフの人はそこから禁止事項を話し始めた。これをすると強制退場にしますよ、というルール。
 「携帯電話の電源は切ること」「暴力行為は厳禁」まではわかる……が、

「立ち止まること」もダメ。3秒以上停止してはいけないと言われた。
「後退すること」もダメ。2,3歩下がるのも後退とみなしますと言われた。

お気持ちお察しします。夏休みでお盆で、これだけ多くの人がお化け屋敷を求めて並んでいる。回転率を上げて、できるだけ稼ぎたい。客が立ち止まったり後退すると、それだけ進みが遅くなってしまう。経営陣の気持ちが本当によくわかる。

だけどわかりすぎて、良くない。
いざ入って、開けたはずの扉が勝手に閉まっても、暗闇の中に何かいろいろなものがぶら下がっていても、どこかから少女の恐ろしい声が聞こえてきても、いきなり前から幽霊が迫ってきても…… それらの気になる存在を立ち止まって確認なんてできないし、「やだ怖い!」とおののきたくても後ろに2,3歩下がることも許されていない。
頭の隅のどこかに禁止事項、もとい現実世界の事情がちらついて、怪奇の世界にどっぷり浸かれなかった。

お化け屋敷を出てから、そんな愚痴を友人と話しながら、人間関係も同じかもなあと思った。

制約が多いと、それを守らなければ! という義務感が先行してしまう。守っている安心感や満足感があるうちは良いけれど、下手すると、なんでここまでしなきゃいけないの? 面倒臭いなあ、と不満が溜まる。そしてもっと下手すると、無理してまでこの人と一緒にいなくてもいいや、と思ったり思われたりして、関係が切れる。

門限にうるさい親、細かいことにまで目をつける教師、メールの返事が遅いとすぐ文句を言う友人、束縛の激しい恋人、プライドの高すぎる上司、気が利かないわねと言ってくるおばちゃん。想像すると、どれもちょっと嫌だ(嫌だ嫌だと言いすぎると逆に私が制約にうるさい人間になってしまうから、「ちょっと」と付けています。本当にちょっとだけだよ、と良い子ぶってみたり)。
それと同じで、怖がったときの反応に注文が多い幽霊も、少し鬱陶しい。

……なんて、まるでお化け屋敷が全然怖くなかったかのように書いたけど、なんだかんだでギャーと悲鳴をあげました。

※肖像写真は本人の許可を得て撮影・掲載しています。無断転用は固くお断りいたします。