小林リズムの紙のむだづかい(連載139)

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紙のむだづかい(連載139)
小林リズム

【愛情表現】
 

 おじいちゃんは、愛情を伝えるのがヘタな人だった。…といても、今も健在で亭主関白っぷりを発揮し、祖母からは嫌な顔をされているので現在進行形で愛情を伝えるのがヘタなのだ。昔から孫のわたしたちを可愛がってくれたのだけど、その可愛がりかたが物を買ったりお金をあげたりするというありがちな方法だったので、わたしたち姉弟はその恩恵を十分に受けて育ったのだった。それでもたぶん、物やお金をもらっていなかったとしても、祖父の孫に対する愛情みたいなものは伝わってきたと思うし、いざとなったらそのすっかり年老いた手をもってわたしたちを全力で守ろうとしてくれると思う。そういう確信が持てる。

 よくアメリカ映画や海外小説なんかで「マイケル、リサ、愛してるわ」と母親がベッドで子どもたちを寝かしつけるシーンがあるけれど、そんなことを自分の両親からされたら、あまりにも似合わなくて鳥肌が立ってしまうだろう。いくら思い起こしてみても、これまで生きてきて「あなたたちのことを愛しているわ」というようなセリフを身内から一度も聞いたことがないのだけど、それでも愛情をかけられたなぁという実感はある。
 問題は弟だ。弟がきちんと家族、そしてわたしに愛情を持っているのかどうかが、ものすごく気になっていたのだった。

 幼いころ、自分の家族が死ぬということが信じられないくらいに恐ろしくて、そういう事件やドラマをみたりすると、もしこの被害者が自分だったらわたしは死ぬだろうなと考えていた。そして弟も同じだろうと思って聞いてみたのだった。
「ねえ、もし家族が自分以外に全員死んだらどうする?」と。
 当時小学生だった弟はちょっとだけ迷ったあとにはっきりとこう言ったのだ。
「最初は寂しいかもしれないけど、頑張って生きていく」

 わたしはこの弟の優等生な発言にショックが隠せなかった。“大切な人を亡くしても生きていかなくてはいけない”という映画や本で扱われる普遍的なメッセージを、こういうときにつかったのでびっくりしたのだ。そりゃあ、頑張って生きていくのはスバラシイ。スバラシイけれど、当然とばかりに言ったのでわたしは自分の弟に対して不信感を持った。そんなに簡単に立ち直ってしまうなんて、弟は家族に愛情を持っているのだろうか…。“苦しくて生きていけない”というくらいの返答を求めていたわたしとしては、その答えが不満だったのだ。

 さて、そんな弟が高校生の頃に書いた作文を読んだのはついこの間。そこには姉に対するちょっとした思いが綴られていて、わたしは嬉しかった。こいつ、わたしのことけっこう好きなんじゃん、と思い、そう思った自分に少し笑った。小さい頃のようにペンギンのぬいぐるみに「これはペンちゃんで、こっちはギンちゃん」と呼びかけなくなっても、わたしのカチューシャやヘアバンドを欲しがらなくなっても、いつかおじさんっぽくなっても、わたしのなかでは弟はいくつになっても可愛い。

 愛情表現は人それぞれで、お金をあげることで伝えようとする人もいれば、言葉で示そうとする人、抱きしめることで通じる人もいる。いろんな方法があるけれど、本当のところの人の気持ちなんて誰も覗けないしわからない。わからないから、裏切ったり裏切られた気がしたり、傷つけたり傷ついたり、手に負えなくてきりがない。
「Don''t think. Just feel!(考えるな、感じろ)」
という有名な映画のセリフがあったけど、まさにその通りかもしれない。考えないで、感じる。「愛しているわ」なんて言われなくたって家族からの愛情を感じたように、いつかわたしも、誰かに愛を注ごう。

小林リズムのブログもぜひご覧ください「ゆとりはお呼びでないですか?」
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