小林リズムの紙のむだづかい(連載133)

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紙のむだづかい(連載133)
小林リズム

職業選択の自由
 

 書いて食べたい。

 どうやって?とか、何をして?と聞かれたときに何も具体的には答えられないのに、それを「夢」だと豪語して上京したのだけれど、いつの間にかその夢は押し流される日常のなかで擦り減って、消えていった。何も考えていなかった。上京したら、大学に行ったら、時間が経ったら、なりたいものになれるのだと信じていただけだった。

 根拠のない自信なんて厄介だ。努力を積み重ねないままプライドと理想だけがそびえ立つように高くなって、自分はすごいことを成し遂げるはずだ、未来は明るいのだと錯覚する。けれど何がスゴイのかと握り込んでいた手のひらをそっと開いて確認すると、何も持っていなくて、嘘でしょう?とあっけにとられる。すべてが、幻想だったみたいに思う。好きなことも、叶えたい夢も、楽しい未来も。気やすめみたいだと思った。

 わたしが現実にぶちあたったのは、就職活動について頭を悩ませる大学3年生の時期だった。「好きなことを仕事にしたい」と安易に考えていたわたしは、その「好きなこと」を限られた職業のなかから選択しなければならないのだという、当たり前の事実にぶつかって、ただただびっくりした。そうか、わたしの「なりたいもの」はこのなかにあるものなのか…。と、奇妙な気持ちのまま会社調べをし、片っ端から説明会の予約を入れた。けれど中途半端な気持ちで予約をした説明会に、朝っぱらからストッキングを履いて寒いなか会社へ向かう気なんて起きず、いつもバックれては後悔する不毛な日々を送っていたのだった。

 たまに足を運ぶ面接では、学生時代に頑張ったことと、そこから学んだこと、この会社で活かせるだろうこと、などなどを述べて、協調性と自己主張のバランスがうまくいくように話し合い、ひたすら感じよく笑っていた。ゆとり教育でしきりにもてはやされていた「個性」なんて、社会で生きていくにはこれっぽっちも求められていないのね、と何かに向かってケチをつけたくなった。
 「文章書けます!エッセイとか書きます!」とアピールしたところで、それがこの会社で何の役に立つのですかと聞かれたら「アハハ、ヤクニタタナイデスネー」と答えるしかない。実際、役に立たない。今まで自分が学んだことってなんだったんだろうと思った。けれど、いくら文句を並び立てても負け犬の遠吠えのようなもので、わたしには何もできない。ただ文章を書くのが好きだというだけで実績も、それどころか実力さえないわたしに、何かを選ぶ権利なんてない。

 好きなことを仕事にしたいだなんだといったところで、食べていけないのなら意味がないと思った。結構真剣に、思った。だからわたしはとりあえず就職しようとした。ここの会社がいいとか、大手だとかに固執しなければ、就職はできる。


 …かくして就職先に選んだ会社が奇跡的レベルでひどく、入社して8日で同期全員で辞めることになったというのは、おそらく何かの運命なのだと思う。なんの運命かはわからない。あいかわらず先はみえない。けれど、自分がどこに向かっているのかは少しだけわかってきた。本当に、少しだけ。そして行き当たりばったりで生きるのも、悪くないかな、と最近では開き直っているのだった。わかったことは、就職したからって終わりじゃないっていうことくらいだ。

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