ユッキーの紙ごはん(連載8)

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ユッキーの紙ごはん(連載8)



【「僕は女を物のように扱う」「最低!」「だけど物持ちいいよ」「ステキ」】

ユッキー


機会を見つけては、高校時代の仲良しメンバーで集まる。先日も久しぶりにその友人たちと会って、近況報告というのは名ばかりの「恋バナ」をしてきた。

メンバーの一人は、前の彼氏と別れてから良い出会いが全くないらしい。恋愛がしたい出会いが欲しいと言うから、私が「じゃあ紹介できる人がいないか探しておくね」と笑ったら彼女は嬉しそうに頷いた。

が、はたと気付いた。「あ。でも○○ちゃん、面食いだからなあ……」と苦笑いした私に、友人は「あー」と言って照れ臭そうにする。高校3年間を通して、好きな芸能人は小池徹平! と言って譲らなかった子なのである。前の彼氏も、今風で格好良い人だった。

だけど、7月に誕生日を迎えて22歳になったその友人は、「でもさあ」と目を伏せた。「イケメンが好きとか言うの、もう許されない年だよねえ」。

続けて、「もう誕生日とかめでたくないもん」と友人が言う。彼女の言葉に、他の友人たちも「うーん」としんみりした。
私もしんみりした。女って、女としての価値に男よりもシビアだよなあ、とか思って、なんというか女という生物の悲しみにしんみり。

しんみりしながら、大学に入りたての夏、このメンバーで集まった日のことを思い出していた。そのとき私以外には彼氏がいて、敗北感を出さないよう必死な私をよそに、友人たちは「彼氏以外の男とも遊びたい」と言った。「だって、今だけだよ」と。
「今だけだよ」。高校時代、「JKブランドが使えるの、今だけだよ!」とよく言っていた肉食系女子もいた。

「女はいいよな、楽でさ。働かなくったって結婚すりゃいいんだもん」「女はその気になりゃいくらでも彼氏できるだろ」なんて言う男がいたら、その場にいる女たちから視線や言葉で殺される。でも、その殺される男には悲壮感はない。

逆に、「男はいいよね。おじさんになったって、恋愛しようと思えばできるもの。おじさん好きの女って結構いるし」と呟く女の顔には、掬い上げてはいけない哀れさがある。深く突っ込んじゃいけない! 重い話が聞きたきゃ突っ込んでいってください。骨は拾います。

男にしろ女にしろ、異性を羨む言葉ほど無意味なものはない。隣の芝生は青いから。だからこれは私自身が女であるゆえに感じることだと思って読んでもらいたいのだが、女を羨むようなことを言う男には、逆に男であることを誇っているような感じがするけれど、自分には「今しかない」と自らを追い立て、男はそうじゃないからいいわよねと羨む女には、逃げ場のない諦めが付きまとっている気がする。

だけど、22歳やそこらで「もう年だ」みたいなことを言っていたら、これからの人生やってらんないよ。
と、「今だけ」なんてブランドを持ったことがなく、いつだってノーブランドで売れ残り続けている私は、暢気にそう言って友人たちに笑った。

※肖像写真は本人の許可を得て撮影・掲載しています。無断転用は固くお断りいたします。