星エリナのほろよいハイボール(連載10)

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星エリナのほろよいハイボール(連載10)
飾る

 ちょうど一年前、友人にもっと自分を磨けと言われた。つい最近も似たようなことがあったのだが、どうやら私は自分のことにあまり無頓着らしい。そんなことはないのだけれど。ただ、面倒くさがりなだけなのに。とにかく半ば怒られつつ、女らしくなろうと思い私はいろいろなことに手を出していた。
 そのうちの一つ。ネイルアートである。マニキュアなんてものは小学生のころから持っていたが、ベタベターっと塗るだけでアートとは言えなかった。高校生のときに使っていたものが少し残っていたが、どうやら最近はジェルネイルというものが流行っているらしい。というわけでさっそく調べてみた。このエッセイを読んでいる方はわかったと思うだろうが私はわからないことがあるとすぐにパソコンやらスマートフォンに頼る人間である。
 調べたところ、ネイルサロンへ行くと4000円から凝ったものだと20000円以上するものがあることを知った。今までは500円爪を前後のものを買っていたから、想像以上だった。まだまだ私が知らない世界があるんだなあ。しかし、一度やると思ったことは断念したくなくて、地元のネイルサロンを探し、一番安いクーポンを使えるものを調べた。ラメ一色のグラデーションで4000円。うーん、まぁ、しょうがない。興味もあっていってみた。商店街の中心にある階段を上っていくとネイルサロンがあった。内装はとてもお洒落でかわいくて、不思議の国のアリスのようなサロンだった。あまりにもかわいいアンティークがたくさん。
「こちらへどうぞ」
 と案内されたソファもフリルがついていて、私の中では最大級の女子空間。少し引いた。
 広い空間には四つしか施術台がなくて、窮屈感はない。があまりに開放的すぎてこっちがいたたまれない。こんな気持ちになるのは私がおかしいのだろうか。世の女性は強いんだなあ。
 ネイルケアとマッサージもしていただき、希望通りの色のラメグラデーションをしてもらいもちろん満足した私。だが最後にお姉さんに言われた言葉が少しショックだった。
「かかとかたくなってますね。ちゃんとマッサージしてあげてくださーい」
 世の女性ってかかととかマッサージしてんの?
 そしてネイルサロンへ行った一週間後、私はボディケア用品を買いにいった。そうか、自分を磨くことはぱっと華やかなことをすればいいってもんじゃない。そういうのはちゃんと日頃の努力から成り立っているんだ。足用のスクラブとマッサージクリームを買い、さらにはボディバターと新しいボディソープとフレグランススプレーまで買っちゃって。お店の人にマッサージやケアの仕方を聞いたので、しっかりと頑張る。頑張る、はずだったが頑張ったのは約一ヶ月。あれから一年たったのに大して減っていないボディケア用品を見ると、なんていうか切ないような気がする。あの頃の自分、お金持ってたんだなあ。

 ネイルサロンへ行った次の日に、母親にもろもろを報告するともったいないと言われた。怒っているわけではないのだが、いつまでもぐちぐちと言われた。そして、去年の私の誕生日。私はジェルネイルキットを両親にプレゼントされた。
「もったいないから、自分でやんな」
 ジェルネイルはLEDライトやUVライトで硬化させるのだが、それもついてきた。ラメも12種類、ストーンやらネイルシールやらいろいろついて4800円。え、安い。もちろんプロにやっていただいたほうがデザインもいいし、長持ちするのだけれど、自分でするのも楽しいし、長持ちしなくても何度でも自分で暇なときに出来ちゃうから大丈夫だった。
 ちなみにこの誕生日、記念すべき20回目の誕生日。もらって嬉しかったし役に立ってるし今でもつかっているのは事実。でも少しだけ、ほんの少しだけ、切ないような気がするのはなんでだろ。これでいいのか、私の記念日。


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