小林リズムの紙のむだづかい(連載117)
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紙のむだづかい(連載117)
小林リズム
【田舎の万引き
正直に告白すると、わたしは万引きをしたことがある。ひとりでではない、共犯は弟。
あれは確か小学校低学年くらいで、わたしたちはいつも2キロほどある通学路を歩いて通っていた。近所に住む子たちといっしょになって、しりとりとか、マジカルバナナとか、お母さんごっことか、野蛮人ごっこ(ひたすら語尾に「〜だべ」をつける)とかをしていたので、毎日の道のりもあっという間だった。
万引きをしたのは、野蛮人ごっこをしながらしゃべっていたときだった。
「ワシはおなかがすいたべ」
「ワシもだべ」
「何か食べるものないべか?」
「ないべ〜!」
という会話をしていた。あの頃はもう、野蛮人ごっこがかなりのブームになっていて、のめりこんで「だべだべ」を繰り返していたのだった。田んぼや畑のある田舎だったし、今から考えるとよく似合った遊びだったと思う。
歩いていると、同じ通学路で通う友達の家があった。庭には巨大なシートが敷かれていて、そこになにか白いものが干してあった。
「これはなんだべ?」
「わからないべ!」
「食べれるべ?」
「でも、人のうちのものだべ?」
「…食べてみるべ!」
わたしたちはドキドキしながら庭にこっそりと入り込み、その白いものを3枚くらいつかんで持ってきてしまった。干し芋だった。小さな野蛮人たちは夢中になってそれをむさぼり、すっかり食べ終わったあとで
「これって盗み…だべ?」
「…絶対内緒にするべ…」
と約束したのだった。子どもながらに罪悪感や後ろめたさはあったのだけど、それよりも干し芋が美味しかった。なんといったって自然豊かな場所で育ったサツマイモで、太陽を浴びてできあがっているのだから、ウマさもひとしお。
干し芋が食べたい!という欲に負けて、それからも何度か人の家にこっそりと入り込んで干し芋を奪還してきた。今日も干し芋食べようか、というときの合い言葉は「干し芋が?」「欲しいもー!」だった…。
あのお家の方は、干し芋が盗まれたことに気づいていただろうか。もしかしたら知っていて、黙ってくれていたのかもしれない。そう思うと胸がきゅうっとなる。後ろめたさと一緒に味わう干し芋。今も干し芋が大好きなのだけど、あのときの干し芋に敵うものには、いまだに出会ったことがないのだった。
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