小林リズムの紙のむだづかい(連載111)

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紙のむだづかい(連載111)
小林リズム

【水もしたたる良い女?】

「よかったら、一緒に入っていきませんか?」
「え?でも…」
「駅の方向ですよね?濡れちゃいますよ」
「…じゃあ、お言葉に甘えて…」

 雨がぱらぱらと降りしきるなか、ちょこっとだけ速足で歩いていると、唐突に左斜め後ろから優しい声。振り返ってみると爽やかにほほ笑む男性が。時間は、夕方の4時くらいがベスト。立ち止まった場所には小さな水たまりができていて、3分後にやむ雨のあとには虹がかかる…。
 
 雨宿りをしているときに「よかったらいっしょに駅まで…」というのはきっと難易度が高いから、あえて雨に打たれて歩く女の子になる。濡れながら歩いている人に「よかったら一緒に入りませんか?」っていうのはそんなにいやらしくないだろうから、きっとこっちのほうがいい。こんな感じで、雨の日に運命の人と出会ってみたりしたいと思うのだけど、なんせ折り畳み傘をバッグに常備しているわたしにはなかなかその機会がおとずれない、はずだった。

 まさか、あんな形で絶好のチャンスがやってくるなんて思いもしなかった…。

 あれは確か大学の帰りで、バスから降りると雨が降っていたのだった。例のごとくわたしは折り畳み傘を持っていて、だから傘をさして駅に向かっていた。そしたら少し前に歩いている学生が傘を差さないで歩いていたからドキッとした。その無防備に雨に打たれる姿が濡れた子犬みたいに切なくて、わたしは思わずかけよって声をかけてしまったのだった。
「あの、よかったら一緒にはいりませんか?」
 時間は本当に夕方の4時くらいだったし、なんて絵になる光景だろうと思う。学生は遠慮がちに「いや…」と言ってわたしの顔を伺ってきたので「遠慮しないでください」と言って(半ば強引に)駅まで誘導していった。
 …駅に向かうまでの間、傘を提供してあげた相手は終始恐縮した様子で、わたしが先輩という立場だからかなのかなぁ、と思ったのだけど、なんせその学生って女の子だったし、突然よく知らない人から声をかけられて気まずいし、やっぱり映画みたいにうまくいかないよね、現実って。


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