ユッキーの紙ごはん(連載3)

清水正ブログ」でのエッセイスト、第三の新人はユッキーペンネームはいろいろ考えましたが、この名前でとりあえず、高く大空に舞い上がってもらうことにしましょう。小林リズム、星エリナに続いて大きく羽ばたいてもらいたい。

ユッキーの紙ごはん(連載3)



【食人族がいたらきっと私はモテモテ】
                                           

ユッキー


どうして私がこんな辛い目に遭わなくちゃいけないの? お願い、誰か助けて……。
夜10時。私は泣きそうな顔で体育座りをしていた。
今夜に限ったことではない。時間帯にばらつきはあるものの、ほぼ毎晩そんなことをしながら、世を神を呪っている。つらい。

どうして私がこんな辛い目に……と先ほど言ったが、こういうことを簡単に言う人間には往々にして同情の余地はない。このことをお伝えした上で、私が何をそんなに憂いているのかを明かしたい。お腹が空いているのだ。もう一度言います。お腹が空いた!
現在、ダイエット中(というのを読んで私の写真を見返そうとするのはやめましょう)。そんなに太っているわけじゃない(見返さなくていいからね。あと異論も認めません)。BMI指数はむしろ標準より(ちょっとだけ)低いし、健康そのものだ。だけど悲しいことに、日本社会はモデル体型ブームである。細さへの基準がどんどん厳しくなっている。私の目には充分細く美しい体をしているように見える女性が、「太ってはいないけど痩せてもいないよね」というような評価を受けていることが多々ある。アホか。舐めてんのか。

女性芸人の柳原可奈子さんは、自らの体のことを、「ちびっこ相撲にいる小学5年生の男の子みたいな体してます!」とあっけらかんと笑っていた。その彼女の笑顔の可愛さと言ったら!
だけど私はそんなふうには笑えない。自分のお腹の肉を「膨らみきったお餅みたいな重量感があります!」とか、脚を「飢えたピラニアが完食できるかどうか自信を失くすほどの太さです!」とか、言えません。柳原さんはぽっちゃりしていても可愛いけれど、それは彼女の元々の顔立ちの良さだとか、つるんとした綺麗な肌だとか、その明るい性格だとか、そういうものをひっくるめての魅力だ。私には、そういうものがない。
じゃあ痩せるしかない。そういう結論に至り、ダイエットを始めた。実を言うと、2年生に受けた健康診断の時と比べて、今年は7kgも増量していた。1年かけて地道に太ったようだ。私は残念ながら身長が低いので、これだけ増えると見た目も、マジヤベェ!パネェ!フテェ!状態なのだ。せめて5kgは落としたい。痩せたい……。

ダイエットを始めて約20日。昨日の朝、いつもどおり体重を測定したところ、2kg落ちていた。しかし喜んだのは束の間。早めの晩ご飯が消化され始めた夜の空腹感に、悲劇のヒロインかの如く、ひどいわひどいわと嘆き悲しんでいる。慰めてくれるヒーローは不在です。
空腹感に耐え切れず、ローカロリー(※個人的なイメージです)のもずくを食べて誤魔化そうとする。でも違う、これじゃない……。
食べたい。お寿司が食べたい。納豆ご飯が食べたい。天ぷらが食べたい。ケーキやクッキーなどの、女の子らしいスイーツを食べたいという願望はあまりない。何なら、あつあつご飯に青海苔と天かすとちょっとの天つゆを混ぜた、オッサンの手抜き夜食みたいなもののほうがよっぽど食べたい。

高カロリーへの欲望のあまり、私はついさっき自分の体を眺めながら、「あっ。でも私、きっと食用としては優秀だわ!」と笑顔になった。うーん、ちょっと脂身が多いかな?

※肖像写真は本人の許可を得て撮影・掲載しています。無断転用は固くお断りいたします。