小林リズムの紙のむだづかい(連載90)

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紙のむだづかい(連載90)
小林リズム

【本当の女の敵はぶりっこじゃなくて路線図女子】

「へぇー、一人暮らしなんだ。じゃあ料理とかするの?」
「しますね、最近では肉じゃが作りました!」
 女子の家庭的度を測るお決まりの台詞。家でカップラーメンばかり食べていようが、包丁を握ったことが数えるくらいしかなかろうが、本当のことはどうでもいい。おふくろの味を連想させる「肉じゃが」とか「大根の煮つけ」が得意だとのたまう女子は揺るぎないモテ系。だから「あの子が良いところ根こそぎ持っていく!」だとか「ぶりっこ!」だなんて言われがちだけれど、素直でわかりやすくて、女の敵ではないと思う。本当に怖いのは、もっと複雑な変化球を打ってくる女の子だ。

 社会人の人たちと開催された飲み会で、小学校で臨時講師をやり、ピアノの先生もやっているというスタイル抜群のイマドキっぽい女の子がいた。場の空気もよく読めて、下ネタにも怒らずゆるーく乗り、出すぎず引きすぎずの頃合いを見誤らない無敵女子だった。群を抜いてモテる雰囲気で、男性たちをうっとりと眺め、けれど嫉妬されないように女子ウケにも手を抜かない。トイレですれ違ったときなんかにこっそりと「わたし男の人苦手で、○○ちゃんは可愛くていいなぁ☆」ときゃぴきゃぴしながらボディタッチしてくるから、やっぱこの子可愛いなぁと同性から見てもうっかりと落ちてしまいそうになる。憎めないし、ケチをつけると逆に自分がひがんでいるみたいでみじめになるのだった。
 しかしその子を誘った女の子によると「あの子は大手企業の男性が集まる飲み会にしか誘ってもこないんだよ」と言っていた。「私だけの遊びの誘いには絶対に乗らないから、ふたりで遊んだことない」とも。
 なるほどな、と思った。というのも彼女は飲み会で、できすぎるくらい完璧に振る舞っていたからだ。小学校の先生という小さい子が好きというイメージと、ピアノを人に教えてあげられるという育ちの良い雰囲気。こんな素敵女子なのに「趣味」を聞かれたときに彼女は迷ったようにこう答えたのだ。
「うーん、趣味は…路線図を眺めることかなぁ?」
…感服だった。欠点がないような手の届かないような印象を残したあとでの、路線図が趣味という落としどころ。路線図というださめのチョイス。文句なしの答え!
 もしここで彼女が「お料理が趣味」とか「読書が好き」と答えていたら、無難で突っ込みどころもなく、ありきたりなモテ女子のレッテルが貼られるだろう。計算高くも腹黒くも見えるかもしれない。チープなモテ方で、面白みにも欠ける。しかし、「路線図」と言われたのならたくさん面白がれるし、ユニークとギャップの相乗効果で三割増しくらいで見どころのある女の子になれる。もちろんその趣味を公開したときに場の席は盛り上がりようといったら格別だった。
「路線図って!(嬉々として突っ込み)。どこが面白いの?」
と大喜びで乗りまくる男性陣。
「うーん、こういうところ行きたいなぁとか思ったり」
と、思惑通りに進んだと満足気の表情の素敵女子。そりゃあここで「へぇ、路線図か。ところで…」なんて話題を変えられることなんてほぼ100%ない。
「へぇ!近場だとどこ行きたいの?今度そこでお茶でもしようよ」
彼女がもし、こんな流れにまでもっていけることを見越して計算していたとしたら…。
 
 そういえばこの前「街コンに行ったときに“好きなタイプは?”って聞かれて、タッキーって答えた瞬間、一気に男性陣のテンションが暴落して面白かった」と友達が話していたのだけれど、好きなタイプを聞かれたときに「木村拓哉かなぁ」とか「福山雅治がいい!」と答える女子は外見に対する望みが高すぎて男性を引かせる。女性だって「佐々木希がもろにタイプ!」と言われたら、あんなパーフェクトな子出されてもねぇ…と、引いたり困ったりすると思う。 「加瀬亮の雰囲気がすき!」「堺雅人のオーラ半端ない」と言うくらいが丁度いい。
 趣味を聞かれたときも同じなのだ。嘘でもいいからも面白いもの、ちょっと欠点になりえるようなもの、不思議系をアピールできるものを見繕ったほうが勝てる。ちょっと普通では掴めなさそうな魅力的な女子を目指すのなら、変化球をぶちかましたほうがいいと、また新たに学んだのだった。