ユッキーの紙ごはん(連載2)

清水正ブログ」でのエッセイスト、第三の新人はユッキーペンネームはいろいろ考えましたが、この名前でとりあえず、高く大空に舞い上がってもらうことにしましょう。小林リズム、星エリナに続いて大きく羽ばたいてもらいたい。

ユッキーの紙ごはん(連載2)


【マドラーになったお箸は泡を噴く 後編】
                                           

ユッキー

教授お二人と、漫画家。自分は邪魔者だという思いでいっぱいになって、とにかく気を揉んだ。しかしどう動いても、自分の気遣いが気遣いになっていない気がしてくる。何を飲むのかと聞かれ、私は先生方に合わせるのが良いだろうと思った。大体そこで素直に先生方と同じのをお願いしますと言えばいいものを、「男性の一杯目は生」という固定観念で生ビールを注文。しかし先生方はホッピーを飲まれると言う。聞けば良かった! というか、同じもので、とか言えば良かった! 気遣いをできない人間の思考回路はこうなっています。冷奴を下原先生と半分こする時も、先にお箸を付けては失礼かと思い「お先にどうぞ」と言ったが、先生が半分にした豆腐を少し取りにくそうに取り皿に移し、スプ ーンで醤油を掬っているのを見たら、逆に申し訳ない気持ちが湧いてきた。せめてもの罪滅ぼしに、私も半分の冷奴を自分の取り皿に移してから食べた。おいしかった。ダメ人間にもお豆腐は優しい。さすが大豆。大豆の世界だと、豆腐は大手企業みたいなものなのかな。就活、あるんだろうな。「豆腐に内定決まったよ」なんてドヤ顔する大豆がいる。きっと。それを妬む大豆も。
と、まあ長々書いてきたけれど、場違いだよお、なんて私が緊張していたのは実はせいぜい最初の30分間程度。お店に着いてからだと10分。私たちが着いて少し後に日野先生がいらして、やはりホッピーを注文。瓶のホッピーと、5分の1ほどまで焼酎の入ったグラスが来る。ちなみにホッピーはグラスが満タンになるまで入れても、一瓶で大体3杯分はある。だから2杯目以降を頼む時は焼酎の注文だけで済むわけで、「中一つ」と注文する。これが理由はわからないけどセクシー、に感じてしまうんですがどうですか。なか、ひとつ。特に日野先生のように、頭から顎まで豊かな白髪に包まれた、端正な顔立ちのおじさまが「中一つ」と言うのは、なんというか、特定のフェティシズムを刺激するものだ と思います(逆セクハラで訴えないで下さい)。話がずれました。で、そのお店は、お酒をかき混ぜるためのマドラーをホッピーの瓶に刺して持ってきてくれるのだけど、日野先生が別の場所で飲んだ時、マドラーが付いてこなかったらしい。だから割り箸でかき混ぜていたところ、割り箸というのは木でできているから段々とホッピーが染みてきて、気が付いたら割り箸の先から泡が噴いていた。というお話を聞かせてくれた。
私はこれがツボに入って、大笑い。生ビールを飲み終わる頃でアルコールも効き始めていたのも手伝って、その笑いをきっかけに、間違った気遣いは吹っ飛んだ。その代わり正しい気遣いの心が降りてきた……わけはなく、要は図々しくなっただけ。中一つ! ドヤ顔で店員さんに言い放ったり。酔いがすっかり醒めた朝、正直どうしようかと思った。失礼なことを何か、いや、失礼なことしかしていない気がする。自分が酒乱であるという事実をそろそろ受け入れる時がやってきたのかもしれない。
第1回目のエッセイは今回の飲み会のこと書きます! と飲み会の始まりの時に清水先生にお伝えして、その通りに書かせていただいたわけですが、たくさん思うことがあって書ききれません。一口に言うと、楽しすぎました。清水先生、下原先生、日野先生。途中から合流なさった山下先生、OBの先輩方。この場を借りてお礼申し上げます。ありがとうございました。そして、あの、本当にすみませんでした。