星エリナのほろよいハイボール(連載4)

星エリナのほろよいハイボール(連載4)


ビールを飲む
                                           

星エリナ


 実は日本でビールを飲んだことがなかった。両親はお酒が大好きで、遺伝なのか私も好きだ。両親と飲みに行くことも多い。いつも何を飲んでいたかというと基本的にはワイン。友達と居酒屋へ行くと大体ハイボール発泡酒も飲んだことがない。日本独特の「とりあえず生」を私は経験したことがなかったのだ。
 ドイツと言ったらビールでしょ。私がドイツへ行くと言うとほとんどの男性はそう言った。あとやっぱりソーセージ。もちろんビール、飲んでくるよ。そう言って旅立った私だったけれど、本当はビールを飲めるかわからなかった。
 飛行機は現地時間で夕方17時にフランクフルトに着いた。それから少しバスで移動して、夕食だった。11時間のフライトの間には二回の機内食と軽食が出ていて、正直あまり空腹感はない。それでもやはり、一番最初の食事だからそわそわしていて、私は迷わずビールを注文していた。
 人生初のビールは麦の香りが強く苦味のなかにほんのりと甘い大人の味だった。

 次の日からもどんどんビールを飲んだ。ラズベリーが入った甘くて赤いデザートビール。ハーブが入った香りが強い緑のビール。小麦を使ったヴァイツェン(白い)ビール。初めて飲んだビールにはまって、私は毎晩飲んでいた。なんといっても料理がビールに合うのだ。メインディッシュはもちろん付け合せのポテトもスープも全てに合う。なぜなら全て、しょっぱいのだ。日本食よりも味が濃いことは想像していたが、スープまでしょっぱいとは思わなかった。スープを飲みながらビールが飲めてしまう感覚をどう伝えていいかわからない。
 ミュンヘンにある有名なビアホール、ホーフブロイハウスにも行った。とても大きく歴史もあり、観光客もたくさん来る。ここでもスープを飲みながらビールを飲んだ。それからやはりソーセージ。ソーセージなどの付け合せにかかせない、キャベツを発酵させたザワークラウトもたっぷりと出されたが、これも味が濃い。ビールがよくすすむ。

 ということで私のドイツでの食生活は毎晩ビールと味の濃い肉料理で埋め尽くされたのだ。おかげで、日本に帰国して最初の居酒屋で、実はずっと言ってみたかった「とりあえず生」を言うことができた。うーん、日本の生ビールは思っていたより薄い。今度はベルギーに行こうかな。