小林リズムの紙のむだづかい(連載64)

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紙のむだづかい(連載64)


小林リズム

【色気が売ってたらいくらでお買い求めになりますか】


 私の父は、ときどき女性に間違われる。目がクリッとしていて、顔がまるくて、オムツのパッケージに載っている赤ちゃんのような顔をしているからかもしれない。どちらかと言えば色白で、体毛も薄いので、確かに女性的なつくりだと思う。
 一方で、弟は背は低いけれど女性に間違われることはまずない。色黒で剛毛、声も低いので父とはあまり似ていない。幼少期はカワイイ顔をしていたけれど、成長と共に輪郭も体格も男性的になってきて、いつの間にかまったく可愛げがなくなっていた。

 こんなふうに外見上はあまり似ていない父と息子だけれど、彼らには共通点がある。それも「異国の地で男性に襲われそうになった」という経験なのだ。
 父は若いころにイタリアへ旅行に行ったとき、イタリア人男性の友人に部屋の鍵をガチャリと閉められて、ベッドに招かれたらしい。結構ガタイが良い人だったから怖くなったみたいだけれど、ここは奪われてはならないと「チャオ!」と挨拶をして鍵を開けて逃げてきたそうだ。

 弟はインドで放浪していたときに、電車の荷台で寝ていると突然インド人男性が襲い掛かってきたらしい。そのことについて「もっと詳しく聞かせてよ」と頼んだのだけれど、弟は「僕だっていろいろあるんだから…」と、鮮明には語ってくれなかった。もしかして、本当にやられてしまったんじゃ…と、心配と好奇心で確認したけれど、それはないらしい(たぶん)。

 それにしても、なぜ彼らはそんなにも男ウケがいいのか。もし、男性にわかる色気みたいなものを父と弟が発散しているのだとしたら、ちょっと譲り分けてほしい。相手が強烈にモーションを仕掛けたくなるようなフェロモンがあるのだとしたら、そりゃあもう羨ましい。一応私も同じ血をわけているわけだし、そこらへん有効的につかえないだろうか…。と、考えていたら「虜にするフェロモン香水」みたいな商品を見かけて、そのうさんくささムンムンのキャッチコピーと安っぽいデザインにも関わらず、買おうかな、なんて思ってしまったのだった。なるほど、私のこの浅はかさとラクになんとかしていこうという精神には確かに色気がない。