小林リズムの紙のむだづかい(連載55)

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紙のむだづかい(連載55)


小林リズム

【グアム物語】


 旅先での恋って、憧れる。
 出会わないはずのふたりが出会う…というところが運命っぽくて、むしろ「出会うべくして出会ったのね…」なんて思えてドラマチックな感じがする。

 大学3年生のとき、小学校からの付き合いである親友とグアムへ行った。「友達歴10年記念旅行」と、まるで中年夫婦みたいなテーマで開催し、お揃いのピアスやらネックレスをつけてかなり意気込んでいた。
「ねえねえ!運命の出会いあるかな??女二人旅だし!」
とうきうきしている私に対し「あるといいねー」と冷静にほほ笑む親友。2月という中途半端な時期ならヒマな大学生がたくさん旅行をしているだろうし、リゾート地で行く場所なんてたかが知れている。これってもう、出会うしかないんじゃないでしょうか…という思惑とは裏腹に、実際に足を運んでみると、それはそれは見事なまでにカップルが多かったのだった。

 女子大生らしく水着を着てはしゃいじゃったりなんかして。ココナツっぽい甘いカクテルに、頭に飾るプルメリアの花。常夏の太陽に信じられないくらい綺麗な海。成り行きで楽しむ異国の人との会話。高校生の頃からふたりで買い物へ行っても、最終的には疲れ果ててベンチに座ってぼうっとするというコースが恒例な私たちにとっては、珍しく若者っぽい期間を過ごしたのだ。

 最終日二日前。ガンガンと降り注ぐ日差しの下で、ふたり並んでバスを待っていた。しかし待てど暮らせどバスが来ない。「今日バスあるのかな?」「うーん、でもちゃんとバス停時刻に書いてあるよ」というやりとりをしながらアイスを食べていたりしたのだけど、結局予定時刻を30分くらい過ぎても来なかった。そんなときに、同じくバスがこなくて困っていたのが、彼だった。
 彼は、私たちのすぐ後ろの順番にひとりで並んでいた。もとから日本人が多いグアム。さらに旅行先だと控えめな日本人も3割増しでオープンマインドを発揮する。
「まだ、バスきませんよね?遅いですよねー!」
と話しかけたのは私だった。それに対して彼は「そうなんですよ、こないですよね」なんて気さくに乗ってくれた。それからはありがちな会話。「どこから来たんですか?」「関西です。おふたりは?」「わたしたちは東京のほうから!」みたいに進み、成り行きで一緒にショッピングセンターへ向かい、なりゆきで一緒に夕飯を食べた。そして待ち合わせ時間を決めて、三人で海へ行って浜辺で横になって星空を眺めたのだった。今のこの瞬間、星空を見ながら人生について語り合うなんていう時間は有限なのだと3人とも知っていた。知っていたからあんなに無防備にドラマみたいなことを恥ずかしげもなく堪能できたのだと思う。

 それにしても、まさか、こんなところで出会うなんて思いもしなかった。そう、その彼が…のちに親友の彼氏となったのだった。私の知らない間に、水面下で愛を育んでいたらしいふたりは、関西と関東という遠距離ながら付き合い始めてもう2年になる。あのとき私が話しかけてたからふたりは出会った…!なんて、ドラマに入り込めなかった私は一人で勝手に思い込み、脇役ながら二人の運命を祝福しているのだった。