小林リズムの紙のむだづかい(連載53)

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紙のむだづかい(連載53)


小林リズム

【好きすぎる病】


「2年以内に婚約まではしてもらう!」
と意気込んでいる友人は、現在その婚約候補者が3人いる。どの人も経済力のある人たちで、そのステータスの高さにはびっくりする。優秀大学出身の大手企業勤めや医者と、もうまさに、エリートコースのフルコース。しかも3人とも彼女のことを純粋で聞き分けの良い女の子だと思っていて、まさか自分が掛け持ちされているなんて考えてもいないのだ。

「お金に余裕がある生活がしたいの!シャンプーも良いものを使いたいし、まつエクも毎月つけたいし、ヨガも習いたい。だから相手の条件で経済力は優先する!」
と話す彼女はしかし、自身が看護師免許を持っていることもあり、どこに行っても自分で稼げる能力があるのだからすごい。

「にしても、すごいよね!どうしてそんな経済力ある人とばっかり出会うんだろう?」
と私が聞くと、彼女はちょっと考えてから、
「わかった!お金ない人とはあんまりしゃべらないようにしてる」
とばっさり言うので笑ってしまった。そうやって結婚に対するスタンスや、自分の人生設計や幸せについて明確な彼女が、私は好きだ。嘘がなくて現実的で、生きている感じがする。

 そんな彼女も、純粋に恋をしていた時があった。高校2年生くらいのときだったと思う。「彼氏ができたー!」という文章と共に送られてきたメールの写真には、金髪でやんちゃそうな少年が写っていたけど、付き合いは2週間くらいで終わっていた。
 でも、好きすぎてその人の家に遊びに行ったとき、ごみ箱から彼が捨てたティッシュをお持ち帰りした…のだけど、そのティッシュ(ゴミ)をタクシーに置いてきてしまったと激しく後悔していた。

 大学生になってからも、同じ年の男の子と付き合っていて、これまた好きすぎて自滅していた。本当はこの彼の子を在学中に妊娠する計画だったらしい。別れるときの相手の誠意ない対応に腹立って「一緒に殴り込みに行ってよ!」と頼まれたので、本当に手伝おうとしたことがあった。油が染みてきそうな臭いものを郵便で送り付けるとかいう案も出た。

 彼女の「好きすぎる」気持ちの分散は恋人を掛け持ちをすることによって解決すると思ったのだけど、結局のところ婚約候補者のうちの一人のことを本気で好きになってしまい、焦っている。予定調和に進まない、何をしても憎めないピュアで無邪気な彼女に、幸せになってほしいと思う。だけど、ひとりの人に落ち着いてすぐに結婚してしまう前に、もうちょっと自滅して楽しませてほしいなぁとも思うのだった。