小林リズムの紙のむだづかい(連載30)

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新しい出会い。アンナ&リズム。
紙のむだづかい(連載30)


小林リズム

【無職にだって、未来はあるさ】

 無職になってから眠りが浅い。いつも緊張と変なプレッシャーみたいなものがごちゃ混ぜになって、自然と早めの時間に目が覚める。まあ早く起きたからといって特に予定がないのが無職なのだけれども。自分が年を取ったときのことを想像すると、さすがにちょっと怖くなってくる。今は若くフレッシュだから無職アピールをしてもネタになる(と思っている)のだけど、いつか結婚してマサオくんとかヨシコちゃんとか産んで、家計が困窮してちゃんと働かないと食べていけなくて、いざ働きに出る!っていうときに、社会に適応できないのは恐ろしい…。などと思いながら実家の両親と電話をしていたのだった。
「りっちゃん、社会保険ってどうなるの?」
「え、今のところお父さんの扶養に戻るんじゃない?」
「じゃあ年金は?」
「……(絶句!)」
というようなやりとりをしていたのだけど、無職の自分が年金について思い悩んでいるという状況に笑えてきた。だって、老後って!申し訳ないけれど、老後の自分を思いやれるほどの余裕が今の私にはないです。今月の家賃と数十年後の生活っていったら、そりゃあ、今でしょ!
 「将来のために今を我慢する!」っていうのと「今が楽しければいいから将来は考えない!」っていうのは、両方わかる。今までどちらかといえば前者のほうを優先してきた気もする。どっちにしても未来なんて今の連続でできているのだから、今できることをやれているのならあんまり悲観する必要もないはず…と無理やりにでも自分に言い聞かせるのだった。
 しかしどうにもこうにも無職が辛いのは、未来が見えないことへの不安だ。これからどうなるんだろう…と結構深刻になって考えれば考えるほど動き出せなくて途方に暮れる。そんな底なし沼にはまりかけていたら、高校の同級生からフェイスブックでメッセージが届いた。

「久しぶり!退職したことを公表して、もしかしたら色んな人から連絡きてるかもしれないけれども…メッセージを送らずにはいられなかったわ(笑)
ここ数日であなたの連載にどっぷりはまって、何故か私も自分の淡い過去を思い出して一人酒しております。私もあなたもこれからどうなるかお先が見えないけど、見えないからこそどうにもできるしね。ってか、どうにかしなきゃなんだけど(笑)まあ、お互い頑張ろう。そしていつかおいしいお酒を一緒に飲みに行きましょう」

 彼女は私と同じ大学に進んだのだけれど、音楽を志して現在海外にいるらしい。彼女の大学を中退したときの覚悟とか、海外へ行ったときの気持ちを想像したら、なぜだか泣けてきた。私なんかは無職になってしまったクチだけど、彼女のように欲しい未来を掴むために人生を賭けるってすごいよなと思った。そうだね、お互いこれからどうにかしなきゃだね。そんなふうに思ってふと気づいた。もしかしたら無職が面白いのは「未来が見えないこと」そのものなのかもしれない。