小林リズムの紙のむだづかい(連載22)

清水正への原稿・講演依頼は  qqh576zd@salsa.ocn.ne.jp 宛にお申込みください。ドストエフスキー宮沢賢治宮崎駿今村昌平林芙美子つげ義春日野日出志などについての講演を引き受けます。


ここをクリックしてください。清水正研究室http://shimi-masa.com/


四六判並製160頁 定価1200円+税

京都造形芸術大学での特別講座が紹介されていますので、是非ご覧ください。
ドラえもん』の凄さがわかります。
http://www.youtube.com/watch?v=1GaA-9vEkPg&feature=plcp

http://www.youtube.com/user/kyotozoukei?feature=watch



画・кёко

紙のむだづかい(連載22)


小林リズム

【そして無職になった件】



 入社してはじめて迎えた花の金曜日。私たちは限界に達し会社の異常さについていけず「いつまで働こうか…」「訴えたほうがいいかな…」「あの経営者いつまで生きているんだろう…」と話し合っていたのだった。「あたしたちマトモだよね?」と確認し合った。そして経営者の名前を知らないことや、経営者が係争中だということ、利益率が70%以上あるということ、名ばかりの社長は事務職をやっているふつうの社員だということに、疑念を持ち始めた。「ねえ、あの洗脳講座のとき、ボイスレコーダー使って録音しない?証拠として持っておこうよ!」という案も出た。本当にあお通り録音しておけばよかったなぁ、と今なら思う。

 そして翌週、早朝の洗脳講座。「この真理についてどう思う?」と聞かれ「洗脳されている気持ちになります」と答えた私は退職することになる。残りの同期ふたりも「お前らにこの会社の精神がわからないのなら辞めろ」とのお触れが出されて辞めた。同期の子は「労基署行く!」と言って今までの経緯を資料でまとめ、もうひとりの子は実家へ帰ってしまった。

 まさか自分がこの年で、退職届を書くことになるなんて思ってもみなかった。書き方がわからないし、手続きもわからないし、そもそも社長の名前も知らないし、ていうかお給料どうなるんだろう…と、混乱して現実感のないまま、とりあえずネットを参考にして殴り書きの退職届を出した。
 退職届を書くことでいっぱいいっぱいだった私は、次に自分が無職になるとも思っていなかったことに気付く。フリーターとかニートとか最近の若者にはたくさんいるらしいけれど、まさか、こんなに現実的で真面目な私が無職になるなんて…!と正直びっくりしている。ねえねえ、新卒で正社員として一週間くらいしか働いた経験のない私を、どこの会社が雇ってくれるというの?世の中そんな甘くないよ?ていうか、家賃とかどうやって払うの?生活費もあるでしょ?と自身を叱咤激励しているのだけれど、なんだか現実感がわかず、人生のレールからはずれてしまったことに茫然としている。マック行ってもてりやきバーガーのセットを買うのに後ろめたさを感じるよ。「無職なんだ」と言い聞かせて、おとなしく100円マックを選ぶよ。無職はつらいぜ。