「横内明美・自選展」

いつの間にか春になった。散歩していると桜の花が目に入ってくる。ゆっくりと歩いて春の午後を満喫する。
あびこ市民プラザギャラリーに立ち寄ると「横内明美・自選展」が開催されていた。会場に入ったとたんに<横内明美ワールド>がまばゆいばかりに迫ってくる。久しぶりに芳しい芸術を体感する。感性が全開、頭脳も明晰になる。十七歳の時の自画像に何か惹かれるものを感じた。芸大入試前の作品もいい。古楽器奏者(吟遊詩人)を題材にした作品が多かったが、自在な精神、解放された精神が横溢している。マチスシャガールに通ずる色彩、構図も連想したが、横内明美独自の世界が創出されていることは確かだ。形にこだわらない自在な精神が、独自の絵画時空を織りなしている。会場に置かれた何点かの彫像も心をなごます。赤子のような無垢と母性の豊饒、女性の聖性をそこはかとなく感じさせる。こういう塑像に囲まれ、まどろみの時をすごしたくなる。会場全体が詩情豊かな母性的な癒しの空間とも化している。パリを題材にしたパステルには透明感あふれるインテリジェンスが漂っている。ぜひ、横内さんにお話しを伺いたいと思ったが、残念ながらこの日はお会いすることができなかった。
受付のひとによれば、横内さんは我孫子在住三十年だそうである。横内さんの描く「手賀沼」は我孫子に生まれ育ったわたしには、斬新で、面白かった。手賀沼が一瞬にしてパリ風な化粧で、妖しい魅力を発揮している。それでいてやっぱり我孫子手賀沼であることにちがいなく、横内さんの画力を感じた。