小林リズムの紙のむだづかい(連載17)

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山下ゼミの美女戦士軍団

紙のむだづかい(連載17)


小林リズム

◆夫婦なんて


 「ちょっと、あたしの眉毛切るハサミで鼻毛切らないでよ!」
「そっちこそ、俺のヒゲそりで腋毛を剃るのはいい加減にしてくれないか!」
こんな会話が繰り広げられる夫婦のもとで育った私は、夫婦というものに対して夢を持っていない。優しく女性らしい妻という役割を無視した母と、強く頼り甲斐のある夫という役割を放棄した父。彼らのような夫婦が理想だとはちっとも思わないし、私が築くならもっと甘くて素敵な家庭がいい。けれど最近、夫婦とはいえ赤の他人と自分のオナラや毛、鼻水や便秘などの一切を共有すること。相手がそれを許してくれるだろうと確信していること。そのことの壮絶さにおののいている。人を巻き込んで生きていくことの強さを思う。無防備に相手の懐に飛び込むことも、相手を信じきって受け入れることも、どちらも難しいことだ。
「あなた、足の裏のかかとがバリバリと乾燥しているわよ!」
「そうなんだよ、今度ヒビ割れ軟膏みたいなやつを買ってきてくれよ」
「自分の小遣いで買いなさいよ。
私はこんな夫婦にはなりたくない。なりたくないけれど、このふたりを少しだけ、羨ましく思う。
「ねぇねぇ、陰毛に白い毛って生えてる?」
「はぁ?そんなの生えてないわよ。あなたもしかして生えてるの?」
「…いや…ちょっと言ってみただけ…」
「わかった、生えてるんでしょう?ねぇ、何本くらい生えてるの?」
いや、前言撤回だ。