『悪霊』ブームになるかも

八月二十八日、九ヶ月ぶりに再会した『蒼ざめた馬』論七十枚をポメラの操作ミスで失い、さすがにその日は原稿を書くにはならなかったが、翌日の二十九日から気を取り直し、電車の中、喫茶店、居酒屋で書き継ぎ、本日までに四十数枚書いた。失われた原稿の内容を確認することはできず、まったく違ったものになっているかも知れないが、気にもとめずに書き進めている。ロープシンの『蒼ざめた馬』論ではあるがサブタイトルが「ドストエフスキー文学との関連において」で、『罪と罰』や『悪霊』『カラマーゾフの兄弟』、初期の作品『弱い心』なども入り込んでくる。

昨日、東京新聞から亀山郁夫さんの『謎とき『悪霊』』（新潮選書）の書評が依頼されたので快く承諾した。すでに亀山さんとリュドミラ・サラスキナさんの対談を含む『ドストエフスキー『悪霊』の衝撃』（光文社新書)を面白く読んでいたこともあり、今度の本は書評を念頭においてじっくり読んでみたい。昨日は山崎行太郎さんがアルカディア市ヶ谷で「政治と文学〜ドストエフスキー『悪霊』をめぐって〜」をテーマに岩田温さんと対談している。わたしも九月末には『清水正・ドストエフスキー論全集』第六巻『『悪霊』の世界』を刊行するので、なんだか知らないがもしかしたら『悪霊』ブームになるかもしれない。

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