「日野日出志研究」第二号編集中

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日野日出志研究」第二号に掲載予定の原稿から、今回は日芸図書館課長の原稿を紹介します。
クールな日野日出志作品
戸田浩司 日芸図書館課長)

 今年3月,日本政府の知的財産戦略本部企画委員会は「クールジャパン推進に関するアクションプラン」を発表した(5月27日一部改定)。その中の「Ⅰ 総論」から一部を引用してみると,「我が国の歴史・文化の中で培われた美意識や創意工夫に基づくクールジャパンは,世界に通用する知的資産である。(中略),それら(※筆者註:クールジャパンのこと)をグローバルに発信,更に日本に呼び込み,人気を拡大させていくという好循環のサイクルを確立するとともに,そのための基盤整備を図っていくことが重要である。」と記されている。「クールジャパン(素敵な日本)」という言葉にはゲーム・マンガ・アニメといったコンテンツも含まれている。つまり,マンガは日本が世界に誇れる文化の一つであり,今後さらにマンガ人気拡大のための基盤整備に努めると政府が表明したのである。中学生の頃,「週刊少年ジャンプ」を毎週欠かさず買ってきては読み耽り,挙句の果てに親から怒られていたことを思い出すと隔世の感がある。
 また,マンガに関するミュージアム,展示施設は日本全国に約30か所ある。大規模なところでは「京都国際マンガミュージアム」が,また完全前売りチケット制の施設として「三鷹の森ジブリ美術館」が良く知られている。ジブリ美術館は平日以外のチケット入手が難しく,現に11月中の土・日・祝日の入場券は完売している(11月11日の時点で)。最近では今年の9月3日にオープンした「川崎市 藤子・F・不二雄ミュージアム」が記憶に新しい(ここも11月中の土・日・祝日の入場券は完売状態)。明治大学には「東京国際マンガ図書館」の建設計画がある(2014年完成目標)。ある地方自治体でもマンガ博物館開設準備中との噂も聞く。これからもマンガ関連施設は増えていくであろう。
 このようにマンガが文化として公に認知された今年,日藝図書館ではマンガコーナーを図書館出入口付近に設置した。そして同時に本学部非常勤講師・日野日出志先生の単行本(初版本)を収集し始めた。「日野日出志・全単行本目録」(清水正著 2004年12月10日 D文学研究会発行『実存ホラー漫画家 日野日出志を読む』に収録)を見ると,1971年8月にひばり書房から発行された『地獄の子守唄』から始まり2004年11月に米国・DH Publishingから発行されたHINO Horrorシリーズ(英語版)に至るまでの140タイトル(オンデマンド版を除く)が掲載されている。そのうちの約半分,68冊を現在までに収集した。140タイトルの大半は既に古書でしか入手できないものなので,その68冊は古書店を通じて購入した。林芙美子関連の資料を納入した取引実績のある古書業者に上記の目録を渡し,古書店のネットワークを駆使して探し集めてもらった。集まった単行本の中には,目録に掲載されていないものが含まれていたというおまけ付き。1987年3月16日,ひばり書房から発行された『ファミリィブックス 羅生門の妖怪(おばけのまんが)』がそれである。「羅生門の妖怪」,「うらみの生首」,「墓をあばく老婆」,「地獄からの使い」,「安義の橋の鬼」,「茨木童子」の6作品が収録されている。
また,この目録は2004年までに発行された単行本についてまとめられているが,その時点で既に米国,イタリア,台湾,韓国で翻訳,発行されている。まさに「クールジャパンのグローバル発信」を先行していたのである。
さらにインターネットで検索してみると2004年以降も英語,独語,スペイン語,フランス語版による作品が引き続いて出版されていることがわかる。アマゾン日本版サイト(http://www.amazon.co.jp/)で検索した結果は以下のとおりであった(サイト最終確認2011年11月4日)。
【英語】
①"Lullabies from Hell"(原題:地獄の子守唄・ペーパーバック)2006年4月 Dark Horse Comics, illustrated edition版 
【独語】
②"Hino Horror 01. Red Snake(原題:赤い蛇)2007年5月 Schreiber + Leser
③"Hino Horror 02. Bug Boy(原題:毒虫小僧)2007年7月 Schreiber + Leser
④"Hino Horror 03. Black Cat(原題:黒猫の眼が闇に)2007年10月 Schreiber + Leser
⑤"Hino Horror 04. The Collection 1(原題:Mコレクション)2007年11月 Schreiber + Leser
スペイン語
⑥"La Serpiente Roja" (原題:赤い蛇)2006年11月 Public Square Books
⑦"El niño gusano 3 / manga Terror 3" (原題:毒虫小僧)2006年12月 Public Square Books
⑧"La Serpiente Roja / The Red Snake" (原題:赤い蛇・ペーパーバック)2005年7月 Notorious Ediciones; Tra版
⑨"El niño gusano" (原題:毒虫小僧・ペーパーバック)2005年10月 Notorious Ediciones; Tra版
⑩"Manga Terror 4 El hombre cadaver / The Corpse Man" (原題:死肉の男・ペーパーバック)2006年10月 Notorious Ediciones; Tra版
⑪"Criatura maldita / Hell Baby" (原題:恐怖・地獄少女 ペーパーバック)2007年4月 Notorious Ediciones; Tra版
⑫"La enfermedad de Zoroku" (原題:蔵六の奇病)2007年10月 Notorious Ediciones
⑬"El hijo del diablo" (原題:地獄小僧)2008年7月 Notorious Ediciones
⑭"Onimbo" (原題:鬼んぼ・ペーパーバック)2008年12月 Notorious Ediciones
⑮"Galeria de horrores" (原題:○○○○)2009年6月 Notorious Ediciones
⑯"Galeria de horrores / Gallery of Horrors" (原題:○○○○)2009年6月 Notorious Ediciones
⑰"Noches de Zipango / Zipango's Nights" (原題:○○○○・ペーパーバック)2009年10月 Notorious Ediciones
⑱"Historias de la Máscara" (原題:おどろんばあ・ペーパーバック)2011年3月 La Cúpula. Colección Manga Terror
【フランス語】
⑲"Panorama de l'enfer (French Edition) " (原題:地獄変・ペーパーバック)2004年10月Editions IMHO
(⑲はアマゾン・フランスサイト<http://www.amazon.fr/ >で2011年11月11日確認。)

 日本国内ではなく海外で今も発行され続けているクールな日野作品を,日藝図書館としては今後も収集していく。