清水正・ドストエフスキーゼミ・第七回課題
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理想の男性
大崎帆南
私にとっての理想の男性はとにかく優しく、理解力に長けていて、許容範囲の広い、器の大きい人だ。外見はあまり気にしない。清潔感さえあればどうにかなると思っている。
内面重視のこの理想像は私の考えが少しひん曲がっていて、一筋縄では付き合いきれない少々面倒な性格にある。
もし仮に罪と罰に登場する男性陣と私が付き合ったとする。恐らく彼らが私をどれだけ愛してもうまくはいかないだろう。彼らの中に私のいびつな性格に合う男性はいないのだ。
主人公ラスコーリニコフの場合。まず初めに、容姿端麗な美少年であること。このことがきっと私を常に悩ませることになるだろう。私は外見に自信がないため、自分よりも遥かに容姿の整った男性にすべてを曝け出すことができない。下品なことをしたら嫌われてしまうのではないか。周囲にどうしてあんな女と付き合っているんだとバカにされていないだろうか。そんなネガティブな思考にとらわれ、ラスコーリニコフからの愛を素直に受け取ることができないだろう。また、彼は自分の考えが正しい。自分は非凡人なのだ。という考えを持っている。私はわがままであるため、意見がぶつかったとき、主張を譲ってくれそうにないラスコーリニコフとはうまくいきそうにない。その点は、ラスコーリニコフの親友ラズミーヒンにも言える。
彼はおせっかいだが、それはよく言えば相手を気遣える優しい性格の持ち主だということだ。多少うざったくなることもあるとは思うが、きっとわがままな私に手を焼きながらも面倒を見てくれるだろう。しかしラスコーリニコフと同様に、自分の主張は曲げない頑固なところが見える。また彼は女癖が悪く、私と付き合っていても、綺麗な女性、魅力的な女性が現れたら、きっとキザな態度を取るだろう。行動力もあり、口も達者なラズミーヒンならば複数の女性を誘惑し兼ねない。私は常に恋人の一番でなければいやなお姫様気質なところがあるため、ラズミーヒンと付き合ったら、「どうして他の女の人のところへ行くの!!」と喧嘩ばかりの毎日になってしまうだろう。
マルメラードフ…はもう考えたくもないが、主要人物に入ってくる男性の登場人物なので少し考察しようと思う。彼はとにかくダメ男だ。清潔感はまるで感じられないし、金遣いが荒すぎる。私はどちらかと言えば倹約家で、悪く言えばケチだ。そんな私と彼が合うはずがない。少しの物欲は貯金のために我慢している私を横目に彼はドボドボと酒代にお金をつぎ込むだろう。実に耐えがたい。どんな状況だろうと私は彼から離れる。絶対にだ。正直自分の収入に見合った金遣いをしていない男性が私は大嫌いなのだ。清潔感がない男性も同じくらい不快に感じるが、その点は改善の余地がある。私の頑張り次第で彼を小奇麗にすることもできると思うのだ。しかしお金の遣い方は改善しようにも限界がある。価値観はそう簡単には変えられない。マルメラードフは理想の男性像を語るには遠すぎ、寧ろ嫌いな男性像そのままの苦手なタイプなのかもしれない。
さて、そろそろ主要な男性の登場人物がいなくなってきたようだ。ゾシーモフ…、ルージン…。ゾシーモフについてはあまり印象がないために書けそうにない。となると残ったのはラスコーリニコフの妹ドゥーニャの婚約者ルージンだ。しかし、彼についても上巻しか読み終わっていない私にはプリヘーリヤの手紙に書かれていた、高飛車で、計算高い男。というような微妙な印象しかないため、彼が恋人になったらと考えてもなんの想像も膨らまない。また、私は自分が見たこと、聞いたことしか信じたくない性分で、人からの情報や、噂で人を判断したくないのだ。
ここまで書いてみて、やはり罪と罰に出てくる男性の登場人物の中には私の理想の男性像に近い人はいなかった。それは当り前なのかもしれない。時代背景も国もなにもかもが違うのだから。それに空想の中だけの考察であり、もし実際にラスコーリニコフに出会ったら、あまりの美貌に理想もなにもかもほっぽって、彼を愛してしまうかもしれない。それは現代においても同じことが言え、理想の男性像があり、何個も何個も条件を並べていても、好きになる人はその理想を覆し、条件に当てはまらない人かもしれない。結局恋愛はその時の自分の気分次第なのではないかと思う。もちろん性格、価値観の合う、合わないはある。しかし好きという感情には頭では理解することのできないなにかが働いているのかもしれない。恋は突然訪れるのだ。どうであれ、私はこの先も感情のままに素敵な恋愛をたくさんして生きていきたいと思う。そしていつか長く結ばれるその人が、きっと私の理想の男性なのだろう。
僕の理想の彼女
木野允彰
僕の理想の彼女は、元気っ娘で、メガネで、時々すごく恥ずかしがる、そんな女の子。ポニーテールが似合っていて、なのに髪を下すと急に大人っぽくなる、そんな女の子。優しくて、泣き虫で、絵が上手くて、儚い、そんな女の子。
でも、一番の理想は、僕を愛してくれる、そんな女の子。
僕が好きになった相手は、誰も僕を愛してはくれなかった。僕はただ、「好き」って言ってほしいだけなのに。LOVEじゃなく、LIKEで終ってしまう。
……なんだか、泣けてきた……。
『罪と罰』の女性陣は、僕を愛してくれるだろうか。
まず、熟女は好きになれないので、プリヘーリヤとカチェリーナとアリョーナとリザヴェーダとパーシェンカとナスターシャは最初から除外します。プリヘーリヤから好きと言われてもねぇ……。
残るはソーネチカと妹のドゥーネーチカのみ。ソーネーチカの妹のポーレーチカもいるけれど……うん、まぁ、恋愛対象に入れたらちょっと危ないだろうし……。
ソーネーチカは前回で述べたように、付き合わないと思う。「神様の御加護があなたにも」みたいなことを毎日のように言われるのは怖いので、無理です。
ならば、ドゥーネーチカだ。兄貴ラブな妹だ。萌える。非常によろしい。禁断の愛という響きも好きだが、何より、自分を愛してくれる。それだけですごく幸せだろうな。
相手が自分を愛してくれているとわかると、なんだかすごく安心してしまう。それだけで、愛おしく思えてしまう。
まずはドゥーネーチカと所沢でも歩いてみようか。サイゼリヤで昼食を摂り、
「お兄ちゃん、ミラノ風ドリアがほっぺについてるよ」とかそういう感じでイチャついて、それぞれが注文した料理を半分こ。その後、ゲームセンターにあるUFOキャッチャーでリラックマのぬいぐるみを取ってあげて、プリクラを撮ってお買い物へ。足が疲れてくるけど、好きな人と一緒ならそんなのどこかへ吹き飛ばせる。ポニーテールも好きだが、カチューシャもなかなか萌えると思うから、それをドゥーネーチカにプレゼントしてあげる。
その後、池袋へ移動して一緒に映画を見て、晩御飯をデニーズで食べる。と、そこで、なぜ池袋で買い物をしなかったんだと後悔。慌てて洋服探しにg.u.へ。気に入った洋服を見つけて、さて、帰るか、と、そこでドゥーネーチカ、
「ロシアの最終便、過ぎちゃったから、お家泊めて?」
なんだろう、この展開。まぁ、なんだかんだで我が家へ。
一人暮らし男子の汚らしい部屋。ちゃんと掃除しておけばよかったと、ここでも後悔。結局、ドゥーネーチカは遊び疲れてそのままパタリと眠ってしまいました。
その前に、日本語喋れるのか、とかそういう問題があるので、結局付き合うなんて無理なんじゃないかな、と思う。愛してくれていると気持ちでわかっても、やっぱり言葉にしてほしい。と、ここではじめて気がついた。やっぱり僕は文芸学科の人間なのだろう。
最初に述べた僕の理想は、科学が発展した未来ではロボットとして叶えられてしまうかも知れないしれない。けれども、こちらがいくら愛したところで、相手が心なしなら、僕は不幸だ。心を持ったロボットを作りたい。……小説の話だけれども。