清水正・ドストエフスキーゼミ・第六回課題

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清水正ドストエフスキーゼミ・第六回課題
もしロジオンが私の彼氏だったら。

もしロジオンが私の彼氏だったら。

福田 紋子

ロジオンは顏は美青年。頭は成績優秀で将来有望。そしてハンチング帽じゃなくシルクハットとお洒落にも気を配れて、困っている人を見過ごせないという少女漫画なら絶対王子役の男だ。もしロジオンが私の彼氏なら友達に彼を自慢しまくる。
ただ、ロジオンのお母さんのプリヘーリヤと妹のドゥーニャがこの歳になってもロジオンを愛しすぎているというのは正直引くし、貧乏なところも残念である。
彼と結婚までいっても同居など絶対したくない。
とまあ外見や持っているものだけをみれば彼自体はうわべだけは本当にいい男であるから自慢もできる。
ただ、内面は大変ひねくれているので、本当に心から付き合おうと思ったら大変かもしれない。
彼は気難しすぎるし、変なプライドをもっていて、打ち解けるのは難しそうだ。
打ち解けたと思っても、彼は内心自分を下等な人間だと嘲笑っているかもしれない。本当に読めない男だと思う。
というわけで、自慢する分にはいいが、付き合うとなると本当複雑で嫌味な奴である。
だから、二次元の男とどうこう本気になって考える気にはなれないが、仮にロジオンみたいな奴がいたとして、現実的に考えるとロジオンみたいに屁理屈をだらだらと続けるような男とは一緒にいて楽しくなさそうだし、聞いているだけでうんざりしそうで嫌だ。
やっぱり彼氏になるのだから一緒にいて楽しいほうがいい。顏も頭も優れたロジオンはお飾りにはちょうどいい。でも、ずっと一緒となるとさすがに飽きそう。美人は三日で飽きるってのと一緒だ。顏がよいのにこしたことはないが、よすぎると逆にコンプレックスを抱いてロジオンを逆恨みしてしまうかも。こういう人間のネガティブな部分は積み重なるとかなりのストレスになりそう。
さらに、自分のことを非凡人だなんて信じている中二病持ちときちゃあやってられない。
お前が非凡人なら私は凡人とでも思っているのか?お前には許されることが私には許されない。そんな最初の出だしの立場から違うような相手を愛すことなんて難しいんじゃないだろうか。なぜなら常にその隔たりを意識してしまうし、それによって恋人であるロジオンが私のことを凡人であると嘲笑ってつきあっているかもしれないという恐怖、ロジオンの笑顔の裏側にも疑いのまなざしを向けながらロジオンと接することになる。それって考えるだけで辛いものだ。そんな辛い恋願い下げである。
しかも、ロジオンはかなりのひねくれもの。友人であるラズミーヒンがロジオンにとって良い方向に向くように働きかけてくれているっていうのにそれを台無しにするような行動をとるばかり。なんだ?母親にできなかったからって友人に遅めの反抗期か?
人助けとしてロジオンは何人かにお金を差し出しているが、それも理解ならない。その差し出したお金って母親がどうにかやりくりして借金して出したお金だろう?なのにあっさりやってしまう。そしたらまたロジオンが大好きな母親プリヘーリヤはそのことを知ったときにまた借金だ。優しい息子を演じるには大変なんだな。でも結果的に母親プリヘーリヤに重荷を背負わせる親不孝じゃないか。あげたあとだって微妙に後悔ぎみで煮え切らない男だ。彼は優しいんじゃなくて、それを演じるために躍起になって、そんな虚構の自分と本来の自分とのジレンマにイライラしている愚かな男だ。
というかロジオンという男は本当にわけがわからない。
こういうのをエキセントリックっていうんだろう。
不思議ちゃんも大概にしてほしい。
読む上で超ややこしいキャラである。
人助けをする優しいいい少年かと思えば、自分の変な思想にとりつかれて斧でおばあさんの頭かち割って殺すし。
いいもんならいいもん。わるいもんならわるいもん。
いいもんがわるいもんだったとか、わるいもんが実はいいもんだったなんてのはよくあるが、彼はなんかどっちつかず。だって最終的にお婆さんをやったことは謝らない。なのに自分の犯した罪には懺悔している。
こんなの現実にいたら超面倒臭いだろうな。
ロジオンって他人に借りつくるの大嫌いなやつなんだから。
カップルになったとして、今日は彼のボロアパートに招待されちゃった♡みたいなことになって、行ってみたらなんと瀕死状態の彼が!!おでこに手をあてると物凄く暑い!!
私「大丈夫?今お医者さん読んでくるから!」
すると、医者を呼びに行こうとする私の足をロジオンはガシッと掴んで、
ロジオン「いや、いい。医者に払う金なんてないし。」
私「そんなの私が払うわよ!行くわ!」
ロジオン「いいってば。よせよ・・・」
と言いながら倒れるロジオン。
私「ロジオン!!」
医者を呼びに行く。
医者の治療。ロジオン回復。
ロジオン目覚める。
私「ロジオン!目覚めたのね!調子はどう?」
ロジオン「大分よくなったよ。でも君が払うなんて。君が勝手にしたんだからね。僕はいいっていったのに。」
とまあこんな奴ってことだろ?ツンツンしすぎだろ?
感謝の言葉もないのか!
私はロジオンと付き合うなんて無理だ・・・。



ロジオンが私の恋人だったら

 篠原 萌

 もしもロジオンが私の恋人だったら、私は自慢するだろう。この人が私の恋人
だよ、と言って写真を友達に見せてまわるだろう。なぜ写真なのかというと、実
際にロジオンを友達に会わせるとなるとなかなか面倒そうな性格だからである。
友達と会わせることで後から文句を言われるのは嫌だし、そもそもロジオンは私
の友達と会ってすらくれないかもしれない。というか、私と付き合っていけるの
かということすら疑問である。自分で言うのもおかしいことだが、私は自己中心
的な人物である。人間には誰しもそういった部分があると思うが、私はかなりそ
の面が強いと思う。
 私は自分の中でこういう行動をする人は嫌だなだとか、あまり仲良くしたくな
いなという基準がある。基準といってもそれはとても不明瞭なもので、要は私が
その人物と関わっていて嫌な気持ちになるのかならないのかといったことである
。それは具体的にこういう行動が嫌だからこの人と関わりたくないという場合も
あるし、何となく直感で嫌だと思うときもある。明確な線引きというものは無い
のである。私が人の嫌な部分を見た時、その人物からは出来る限り距離を置くよ
うにしている。進んで関わって、嫌な思いなどしたくないからだ。よく「あなた
にはこういう所があるよね。直した方がいいよ」だとか言ってくる人間もいるが
、はっきり言ってこういうことは嫌いだ。私は他人に同じ行動をとられても気に
しないから、その行動をとっているのだ。直した方が良いとは思えないし、それ
は押し付けだとさえ思える。私のこの部分が気に入らないなら私から離れればい
いし、あなたに嫌な部分があるなら私も離れることにする。そのような考え方な
のである。だから私は気に入らない人の近くにはいかない。どうしても関わらな
くてはいけない時には必要最低限しか話さない。だからきっと、私はロジオンと
付き合っていけないのだろうなと思う。
 なぜかというと私はロジオンが気に入らないからである。自分が世界で一番不
幸だとでも言いたげな計算高い男が嫌いだ。別れ際に「最初から好きじゃなかっ
た」と言ってきそうな奴である。きっとロジオンは自分のすることを全て正当化
するだろう。それが私から見て全く正しくなくとも。人殺しを正当化する辺りに
その部分は表れていると思う。そして私も自分のすることが全て正しいとまでは
いかなくても、概ね正しいと信じている。それから私は自分の考えを理解しても
らえないことが嫌いだ。完璧に同意してもらえなくても、そのような考えがある
ということまではわかって欲しい。真っ向から全否定されると頭に血が昇ってし
まう。ロジオンはそれをやりかねない男だと思う。だからきっとロジオンと私が
付き合っていたら、ケンカが絶えないことは易々と想像できる。
 私からロジオンに付き合って欲しいということは無いだろう。なぜなら性格が
気に入らないから。ロジオンから告白してきたら少しは考えるかもしれない。美
形の彼氏がいたら鼻高々だし、私に告白してきたということは私のことが好きだ
ということだ。ならば私の言うことを多少は聞いてくれるだろう。なら考え方も
少しは私に合わせてくれるかもしれない。そうすれば私のストレスも少ない。そ
こまで計算してやっと私はロジオンと付き合うことを考える。他の人ならここま
で嫌なことを考えないが、何せ相手はロジオンである。別れた後に私の文句を言
われないとも限らない。慎重に付き合うことを考えるだろう。物凄く暗い結末が
待っていることはわかりつつも。
 ロジオンと私が付き合い始めた頃はきっと楽しいと思う。美形で頭の良い彼氏
。私でも多少のことは我慢する。それは私にとっての多少であって、他の人から
したら微々たるものであるが。そんな小さな小さな許容範囲を超えた時、すぐに
別れるのだと思う。私は一度嫌いになればその人のやることなすこと全て気に入
らなくなる。だからロジオンの行動一つ一つを馬鹿にするだろう。そんな私にき
っと彼も言い返してくると思う。その後はケンカが続くだろう。一体そんな状態
で何日持つのか、私自身も気になってしょうがない。
 私とロジオンが恋人になったら、お互いにストレスを貯めあうだけだろう。私
はこれといって長所がないので付き合っても利点は無いし、生意気な女とデート
などしなくてはならないのである。自分のことながら寒気がする。そして私もロ
ジオンと付き合って利点があるとも思えない。せいぜい顔が良くて頭が良くて将
来出世するかもしれない彼氏だということを自慢できるくらい。彼自身ではなく
彼の持っている物を好きになるだけだ。そのような理由で付き合い続けるのは嫌
だ。それならもっと良い人を探したいと思う。ロジオンより持っている物が少な
くても。
 現実にロジオンという存在はいない。だがもしもいたと仮定して、私と付き合
っていると考えるなら幸せそうな場面は想像できない。相手の文句を言っている
場面ならば想像できるが。私はロジオンと付き合いたくないし、きっと向こうも
私と付き合いたくないだろう。本当に、ロジオンが存在していなくて良かったと
思える。私のストレスの原因が一つ少なくなっているということなのだから。

もしもソーニャが彼女だったら
木野允彰

 ロジオンの恋人になるソーネーチカがもし自分の恋人になるとしたら、僕はいったいどうなるのだろうか。美人で可愛いソーニャ。勿論、自慢の彼女となるだろう。体を売っているから夜はもうパーリナイッ、いろんなテクニックを知っているだろう。……うん、はい。
 だが、僕はすぐに別れるだろう。というより、付き合うこともなくソーニャが告白してきても、僕はキッパリと断ってしまうだろう。何故なら、ほかに好きな人がいるから、とか、まぁ、そういうのもあるけれど、まず、恋愛って、気が合うことから始まるんじゃないかな、と思う。
 無信教なんで、無理です。はい。
 神様なんていないと、どうして疑わないんだ? 教会も、神社も、寺も、神棚も、十字架も、すべて人間が作っているじゃないか。人工物に何ができる? 神通力も、聖なる祈りも何もないのに、そんな木や金属に何ができるというのだろうか。
 僕は、ソーニャにまず、哀れみの視線を送るだろう。神に縛られて生きるなんて、なんてかわいそうなんだ。まるで両手の平を釘で穿たれ、十字架に磔にされているイエスのようだ。
もしも神様がいるのならば、人間にそういう風にすがってほしいと思うのか? 動物はそんな風に考えず、のうのうと本能に従って生きている。何故人間だけそんな風に祈らなければならないのか? など、ソーニャに静かに諭すだろう。
僕は昔、お受験のお礼参りに行かなければならなかったときに、ぽつりと零したことで、親にものすごく怒られた。
「神様なんて、あんな狭っちいとこにおるわけなかたい。なんであんな箱に頭下げないといかんと?」
親の怒りようときたら、どっかの国の王様に仕える忠実な家来のようだった。無礼をはたらく者に罰を……とでも言いたげだ。
ソーニャには、そうなってほしくない。
神様なしでも、地球は回っている。世界は存在している。逆に、神様がいると思うせいで、宗教戦争などが起きて無駄な血が流れる。
なぁ、ソーニャ、神様なんかいないんだよ? 君は悪徳宗教団体に騙されてるんだよ?
ソーニャはこの話をどう受け止めるか。「違う!」と叫んで耳を塞ぐだろうか? それとも、何も信じられなくなって発狂し出すのだろうか?
宗教なんて元々政治を都合よく運ぶための道具に過ぎなかった。かといって、科学もただの道具に過ぎないのだが。世界を平和にしたいのなら、最初から宗教も科学も持たない方がよかったのだ。神様がいるから戦争が起き、科学があるから武器が生まれる。神様の存在が罪だ。
と、まぁ、そんなこんなでソーニャとは付き合えません。ごめんなさい、無理です。