林芙美子研究のための取材旅行(連載10)

清水正への原稿・講演依頼はqqh576zd@salsa.ocn.ne.jp 宛にお申込みください。
ドストエフスキー宮沢賢治宮崎駿今村昌平林芙美子つげ義春日野日出志などについての講演を引き受けます。
ここをクリックしてください エデンの南   清水正の林芙美子『浮雲』論連載    清水正研究室  
清水正の著作   D文学研究会発行本   グッドプロフェッサー
清水正の新刊案内林芙美子屋久島』 (D文学研究会・星雲社発売)
A五判並製160頁・定価1500円+税

北九州市立文学館玄関を入ってすぐのカウンターで、山下さんは今川英子副館長への面会を申し出ていた。五分もたたないうちに今川さんが颯爽と登場された。今川さんは山下さんを見たとたん「まあ、お若いのね、学生さんみたい」と口にされた。これで初対面であったにもかかわらず一遍に親しみがわいた。時間があまりなかったので、館内を歩きながらお話をうかがうことになった。
 今川さんの流暢な解説を聞きながら、わたしたち五人は展示ケースを覗いたり、質問したり、写真撮影したりと、とにかくせわしなくも充実した時間を過ごした。
「清張記念館はすばらいしのでぜひ行ってください」とのことであったが、時間の余裕がなく残念ながら行くことができなかった。隣接する図書館も案内してくださるということだったが、これも時間の都合であきらめるほかはなかった。
 特集展示コーナーに今村昌平の映画ポスターがあったので「ぼくも今村昌平の本を出していますよ」と言うと、「お若いのに今村昌平に興味を持つのは珍しいですね」と言う。どうやら私は実際よりも若く見られているらしいので「いくつに見えるんですか」と聞くと「私より五歳は若く見える。五十五歳くらいかしら」と言うので「なにを言ってるんですか、四十二歳」と応えると「エーッ」とびっくりされたので「プラス二十歳」。
こんな軽い冗談を交えながらも、楽しく充実した時間を過ごさせていただいた。
 今川英子さんは編著『林芙美子 巴里の恋』(中央公論社)『林芙美子 放浪記アルバム』(芳賀書店)で知られる研究家で、文泉堂版の「林芙美子全集」の校訂・編集にも携わっている。
  六月十四日に日芸文芸学科の特別講座(私の担当する講座「文芸批評論」の枠内で第一回目を、二回目はゼミや実習の受講生を対象に行います)にお呼びしていますので、日芸生のみなさん、ぜひ受講してください。
 帰り際、今川さんはわたしたち全員に文学館発行のカタログと林芙美子の短編を編纂した文庫本を贈呈してくれた。タクシーまで呼んでいただき感謝の言葉もなかった。