我孫子市民プラザで開催の「モンステラアート展」を見る

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雪がぱらつくなか、我孫子エスパに行き、スターバックスでコーヒーとチーズケーキ。能を活性化させて愛用のポメラで原稿を書く。一時間もすると体が冷えて来たので執筆を中断、三階の本屋に寄った後、市民プラザギャラリーを覗く。会場に入ってすぐに眼に飛び込んできたのが及川政子さんの「屋台」と「チャガルチ市場」。絵が踊っている。精神の躍動を感じる。わたしは何度か韓国を訪問しているが、一番長く滞在したのは2002年の8月である。一カ月ほど留学して「韓国における日本の漫画・アニメの受容」を調査研究するために一カ月ほど滞在した。ソウルのロッテホテルに宿泊し、毎日のようにスタバでコーヒーを飲みながら「冬のソナタ」論や三島由紀夫の「仮面の告白」論を執筆した。日本から同行した弟子たちが一週間ほどで帰国した後は、イーウンジュさんに韓国漫画界重鎮のイーヒョンセ氏へのインタビューの通訳、本屋や繁華街の案内などをしてもらった。ウンジュさんはわたしの『宮崎駿を読む』と『ウラ読みドストエフスキー』の翻訳者でもある。及川さんの絵は韓国ソウル繁華街の躍動感溢れる空気をじかに伝えてくる。単なる賑やかさだけではなく、躍動の裏に潜んでいる寂寥感も伝わってくる。日々の暮らしにある活気と孤独が、鮮やかな色使いで表現されている。ここではデッサンのゆがみもまたひとつの大きな魅力と化している。さらに会場を進んでいくと木村利加子さんの「シエナ」が眼前に現れた。手慣れた構図と色彩によって作家の激しい内面が抑制されて表現されている。具象を解体し、確固たる存在を挑発して原初のカオスのただなかに立って、今再び表現によって自らの存在の証を見出そうとする者を芸術家と呼ぶ。具象の解体作業に慣れてしまうと芸術の危機が訪れる。内面のマグマの噴火と抑制のバランスがうまくとれすぎてしまうと、絵画は商品と化してしまう。木村さんの絵には、ひとを立ち止まらせる何かが秘められている。言いかえれば「シエナ」は言葉を求めている。あからさまにではなく、ひそやかに。情熱と孤独、内面葛藤の赤裸々な姿をヴェールに包んで、「シエナ」はわたしの眼前に立っていた。
及川政子「チャガルチ市場」
及川政子「屋台」


木村利加子「シエナ


木村利加子「咲いた咲いた」