「マンガ論」は手塚治虫の『罪と罰』

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二十五日の「マンガ論」は手塚治虫の『罪と罰』を読んでもらった後、軽く講義。原作のあるマンガに関してはまず原作を読まないことには話にならない。ドストエフスキーの『罪と罰』は清水ゼミの必読書。「文芸入門講座」でも『罪と罰』を必読としたので、文芸学科に関しては全体の半数は『罪と罰』を読んでいるだろうが、演劇学科演技コースの受講生などは誰も『罪と罰』を読んでいなかった。『罪と罰』に関しては落合尚之をはじめ、何人かの漫画家が挑戦している。マンガから『罪と罰』に入ったひとは是非原作も読んでほしい。手塚のマンガ版『罪と罰』に関しては千枚以上の原稿を費やして批評した。『清水正ドストエフスキー論全集』第四巻と第五巻に収録してある。原作で重要な場面、①マルメラードフの告白②ラザロの復活の場面③エピローグにおいてロジオンが復活の曙光に輝いた場面。これらの場面を手塚は省略してしまった。手塚が『罪と罰』を何回も読んで、彼なりに再構築した努力は並大抵のものではないが、しかし原作のもつ思想の深さとスケールの大きさに比べるとどうしようもなく見劣りするのも確かである。私が感心したのは、手塚が『罪と罰』のグロテスクなカーニバル空間を描く、そのおちょくり精神であった。私は手塚の『罪と罰』を千五百枚批評して、手塚は革命も愛も神も信ずることができず、虚無のただなかにあって膨大な作品を描きつづけていった漫画家だったのだな、と思った。授業の後半はもっぱら、先日、日芸江古田校舎で講演した山本寛斎の講演について語った。芸術学部の学生諸君よ、もっともっと青春を謳歌し、芸術に命を燃焼せよ!


受講生の感想
罪と罰』はまだ読んだことがなかったので、マンガで読めてよかったです。原作読んでみます。
(演劇学科 小沼和)

昔の戦争や革命は、殺人を正統化していっていた。自分が正しい、自分が英雄だと。人の命を奪うことが正しい行為とはならない。
(放送学科 宮川晃典)

若い頃の手塚治虫の描いたマンガの特徴がよく出ていて、どことなくディズニー的な感じがしていた。
(放送学科 羽佐間桃子)

初めて『罪と罰』を読みました。原作も読んでみようと思います。
手塚さんの『罪と罰』を読んで感じたのは、「いつもの彼の作品と比べて画面構成が混沌としているなあ」ということです。ラストシーンの構図は、安定感があっていいと思いましたが。
(美術学科 石井悠子)

罪と罰』、初めて読みました。自分がいつも読まないようなマンガをここで読めるので、あたらしいこと、考え、見方がみつかりたのしいです。もっと深く知りたいです☆
(放送学科 佐々木明奈)

手塚治虫版『罪と罰』は確かに子供向けの簡略化って感じがしますが、個人的には凄い面白くて判りやすかったです。
(文芸学科 大川内菜月)

手塚治虫の『罪と罰』は原作とだいぶ違ったので、驚きました。個人的に印象的だった部分が無かったり…。
人によって見え方が違うものなのでしょうか。
(文芸学科 篠崎早貴)

死ぬまで本気で芸術に挑み続けるか「向いていない」とスッパリ諦める覚悟が大切なんだと思いました。
(文芸学科 吉川萌)

芸術学部にいる人間として、どのように生きていくべきかが、よく分かりました。芸術学部は入ってから自分で道を決めなければならないことを考えさせられました。
(文芸学科 伊藤景)

今の日芸は、鳥籠のようです。おとなしい鳥にはなりたくないですが、まだ外界に止まり木をみつけることができません。
(演劇学科 斉藤優衣)

手塚治虫の『罪と罰』は、重要なシーンがすべて省略されていて、正直つまらないと思いました。登場人物はかわいらしいけど、子ども向けだとしてもこの内容はどうなの? という感じでした。
(文芸学科 亀本実世)

私は手塚作品はすきです。でも『罪と罰』はちょっと...。やはり原作とちがうからだと思います。
(文芸学科 粼田麻菜美)

罪と罰』のマンガを手塚治虫が描いているとは知らなかった。
原作も一度読んでみようと思った。
(演劇学科 松本好恵)