「マンガ論」第五回目

清水正の林芙美子『浮雲』論連載    清水正研究室   清水正の著作
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「マンガ論」第五回目(2010/5/24)はつげ義春の「古本と少女」を題材に授業をすすめた。
テキストの解体と再構築によって心優しき少女のイメージはどのように変貌するか。

受講生の感想
本を買い戻しに来た男が、急に親切になるのも不思議に感じた。男だって少女の書いた手紙を読めば、学生が盗みを働いたことは分かるはずなのに。男と少女は繋がっていると思う。
(映画 星潤哉)


最初読んだときから、“この女おかしいな”と思ってました。時代の違いかもしれませんが、あんな行動をする女はやっぱりこわいです。それで、作家はこのマンガで何を表現したいのかも分かりませんでした。
(文芸 張俊ヒ)


私はただ単にいつも見ている本だから手紙と一緒にお金を挟んでおけば、見つけてくれると思った女性の学生への微かな恋心と学生に対する試しの両方が含まれているのかなぁと思いました。戦略的な感じ。
(文芸 中嶋沙耶香)


確かに清水教授の読み方も出来るが、学生がお金を戻した店に寄った時、少女の顔が少し赤くなっているので、この学生が手紙を読んで買いに来たと思って安心しているようにみられる。
(放送 大平将史)


女はただ単に単純だっただけだと思う。そんなに深く考えてないから1000円札を挟むという行動をしたんだと思うし、そんな裏をかこうとする女なら、もっと頭の良い方法をすると思う。女はバカな生き物なんですよ。いつの時代も。
(演劇 土井玲奈)


少女は大学生の青年のことが好きで、お金をあげて青年をおとそうとしていたのだと思う。
(文芸 中村光


私は、本の本当の持ち主が女性を装って手紙を書いたのかと思っていました。
(演劇 岩佐みちる)


お金は手紙と一緒に挟んでたんじゃないんですか?
(文芸 吉田茜)


古本屋の女性が本の中にお金を挟んだ意図が分からなくなった。もし純粋に、学生に本を買って欲しいと思っていたなら、世間知らずだと思った。
(文芸  村上絵梨香)

最初に読んだ時に感じた“ほっこり感”が音を立てて崩れていきました。お姉さん怖い。・・・それはともかく、つげ義春の描く空気が好きです。古本の匂いがするみたいで。あ、「自分に課す」こと、始めてみます。
(放送 江越美紀)


少女の腹黒さに、2度目を読んだ時に、とてもこわくなりました。感動の裏にある本音ほど、こわいものはないですね。奥深いです。
(演劇 斉藤優


僕は女の子の気持ちが分かります。本の中に1000円入れるのは直接話す勇気はなくて、でも何かしてあげたいという気持ちがあるからだと思います。
(演劇 新井俊一)


普通にいい話として読んでしまいましたが、言われてみるとたしかにちょっと不思議なやり方だと思いました。自分がまず気になったのは『古本と少女』というタイトルでした。『古本と少年』もしくは『少女と少年』じゃないのか、と思って。最初に考えたそれを思い直すと、先生の言っていた方がしっくりきて怖いです・・・。
(文芸 篠崎早貴)


いつも、新しい発見や解釈を教えて下さりありがとうございます。新しい“少女”の解釈を元に読み返すと、コマの表情や、タイトルのページにある少年の姿にも、深みが出てくると思いました。読む人によってさまざまな感情を受け取れる、とても興味深い作家だと思いました。
(演劇 三田悠希)


見方ひとつでこの本屋の女が天使にも小悪魔にもみえてしまう。なんだか人生の勉強になりました。いい女になろう!!!!
(演劇 大嶋麻沙美)


私が青年の立場だったらもうちょっと積極的な行動の方がうれしい。試されている感が怖いと思った。でも、この少女の思いは純粋にやさしいと思う。あまり否定的に考えたらかわいそうかなあ。
(演劇 飯野愛希子)


相変わらずの細かい作りと先生の切り込み方が好きです。普通ならありえない!ようなことでもマンガだからありえる。これを文章に直してやってみたい。
(文芸 崎田麻菜美)


今日も元気の出る授業でした。たしかに私もこのマンガを素直に読んでしまって、素直に良い話だなあ、などと思っていたのですが、先生の話を聞いて、なるほどと感じ入りました。また先生の原稿の書き方に感動しました。
(文芸 北村哲士)

『古本と少女』を一番はじめに読んだ時、なんて心優しい少女なんだろうと思いましたが、先生の指摘した通り、千円札を本に挟んで、その千円札を彼はどうするのだろうと少年を試している怖い女性に見えました。
(文芸 伊藤景)


しとやかに片思いする純粋な少女かと思ったら、思いもよらないエグい部分があってびっくりした。
(演劇 高田瑛)


『古本と少女』本当に優しい少女だったらわざわざ手紙は書かないでそのままお金を挟むなり、何らかの形で青年に本を渡すと思う。結局青年が哀れに見えたからお金を恵んだのか・・・。少なくとも青年より立場が上、精神的優位じゃなければあの行動はしないと思う。
(演劇 森永志音)


一番最初に読んだ時はただただいい話だと思って感動したけど、先生の話を聞いてこの少女のことが少し怖くなりました。
(演劇 向井うらら)