公開講座 林芙美子の『浮雲』に見る女の一生

三月七日(日曜日)
我孫子市のアビスタ一階ホールで公開講座 「林芙美子の『浮雲』に見る女の一生
を講演します。午前十時より十一時半まで。参加費500円

「ふれあい塾あびこ」作成のチラシ・ポスターを紹介しておきます。

ふれあい塾あびこ・市民活動フェアin我孫子2010参加企画 
林芙美子の『浮雲』に見る女の一生
日本大学芸術学部教授・日本大学大学院芸術学研究科教授 清水 正氏
−成瀬監督の映画『浮雲』『放浪記』森光子の舞台『放浪記』などを視野に入れてお話したいと思います。−
講師略歴:1949年我孫子生まれで市内在住。日本大学所沢校舎で「マンガ論」を担当、つげ義春などのマンガ作品を講義。日本大学江古田校舎では「文芸批評論」を担当、ドストエフスキ−や宮沢賢治を講義。著書は100冊を超える:ドストエフスキ−関係は10数冊、宮沢賢治は30冊、ジャンルは多岐に亘る。文芸論:「志賀直哉とドストエフスキ−」「ケンジ童話を読め」「三島由紀夫・文学と事件」「志賀直哉を読む」「つげ義春を読め」「ビ−トたけしの終焉」「阿部定を読む」など多数。
3月7日(日) 10:00〜11:30
我孫子市生涯学習センター「アビスタ」ホール
〇参加費 500円  〇定員 100名(申し込み順)
主催 市民活動フェアinあびこ2010実行委員会
企画構成 NPO法人 ふれあい塾あびこ


3/7公開講座参加申込は
Fax:04−7183−3603
tedasuke@jcom.home.ne.jp ふれあい塾あびこ 足助 哲郎 宛

お名前 お電話 eアドレス                          
当方より特に連絡の無い場合は、どうぞお出で下さい---お待ちしております。



公開講座
林芙美子の『浮雲』に見る女の一生
講師 清水正

参考資料編
林芙美子の略年譜
林芙美子明治36年に福岡県門司市小森江に生まれた。父は宮田麻太郎(明治15年)、母はきく(明治元年生)。明治44年にきくは麻太郎と別れて沢井喜三郎(明治21年生)と結婚、北九州一帯を行商。大正5年広島県尾道市土堂小学校に転校(数えの14歳)、教師小林正雄と出会う。大正七年尾道市立高等女学校に入学。大正11年(19歳)卒業すると初恋のひと岡野軍一を頼って上京。岡野は明治大学商科を卒業すると尾道に帰り、芙美子との結婚の約束を破棄する。大正13年、新劇俳優田辺若男と田端で同棲。田辺と別れて詩人の野村吉哉と同棲。大正15年(23歳)、野村と別れて女給生活。12月に画家の手塚緑敏と結婚。昭和3年(25歳)、長谷川時雨主宰の「女人芸術」に「放浪記」の副題を付した作品を発表。昭和5年(27歳)、改造社より『放浪記』刊行、ベストセラーとなる。昭和6年12月にシベリア経由でヨーロッパ旅行、主にパリに滞在(画家の外山五郎を愛していた)、翌年6月に帰国。昭和12年(34歳)12月、毎日新聞の特派員として南京へ。昭和13年9月、従軍ペン部隊の一員として上海へ派遣される。昭和17年(39歳)10月、報道班員として南方に派遣される。昭和23年(45歳)11月、『晩菊』を発表。昭和24年(46歳)11月、『浮雲』を「風雪」に発表。昭和25年4月に屋久島に取材旅行。昭和26年4月『浮雲』を六興出版より刊行。6月28日午前一時、心臓麻痺で永眠。

成瀬巳喜男監督『浮雲
原作/林芙美子 脚色/水木洋子(芙美子と一緒に報道班員として南方に赴任、八ヶ月滞在)
撮影実数は45日。屋久島は鹿児島ロケ。仏印は天城。屋久島の浜辺は西伊豆の海岸。
キャスト 幸田ゆき子/高峰秀子 富岡兼吾/森雅之 おせい/岡田茉莉子 伊庭杉夫/山形勲 加野久次郎/金子信雄 向井清吉/加藤大
 
浮雲』における三角関係の重層
1ゆき子・伊庭杉夫・妻の真佐子 2ゆき子・富岡兼吾・妻の邦子
3ゆき子・富岡兼吾・安南人の女中ニウ 4ゆき子・富岡兼吾・加野久次郎
5ゆき子・富岡兼吾・伊庭杉夫 6ゆき子・富岡兼吾・ジョオ7ゆき子・富岡兼吾・おせい 8富岡兼吾・おせい・向井清吉 9富岡兼吾・邦子・小泉(邦子の最初の夫)
その他富岡兼吾にそれなりにかかわった女/ 1居酒屋の娘 2屋久島の娘
その他ゆき子にそれなりにかかわった男/ 鹿児島の比嘉医師

講演内容趣旨と自己紹介
 去年の六月からとりかかった『浮雲』論は今年の一月までにブログで169回連載した。完成までに後何年かかるかわからない。林芙美子の文学作品、特に『浮雲』は近代文学史上に輝く問題作である。主人公の富岡兼吾はドストエフスキーの『悪霊』の主人公ニコライ・スタヴローギンを日本風に血肉化した人物で、敗戦後六十数年を経ても色褪せずに存在し続けている。今まで本格的に林芙美子ドストエフスキーの文学を比較検討した研究はない。林芙美子は『浮雲』で彼女独自の仕方で〈神〉を〈悪魔〉を、そして〈虚無〉の問題を徹底して探っている。林芙美子は『浮雲』を完成して二ヶ月後に亡くなった。わたしのここ何年かの仕事は、林芙美子の作品、特に『浮雲』を世界文学の地平において位置づけ批評しつくすことである。
今回の講演では成瀬巳喜男の映画『浮雲』にも触れながら、男と女のドラマに照明を与えつつ、同時に林芙美子文学の深淵、その永遠性をも浮き彫りにしたいと考えている。
 ブログはグーグルで「清水正研究室」を検索し、コンテンツの「林芙美子の文学」をクリックしてください。百七十回に及ぶ批評を読むことができます。また、「清水正ブログ」でもさまざまな記事を載せてありますので、ぜひご覧ください。著作に関しては四月に『清水正ドストエフスキー論全集』の第五巻(定価3500円+税)が私の主宰するD文学研究会(発売・星雲社)より刊行されます。また三月刊行の現代思想」臨時増刊ドストエフスキー特集号に「『罪と罰』の深層舞台」が掲載されています。全著作を知りたい方は「清水正ブログ」の「著作目録」をクリックしてください。編著・共著を含め百冊ほどが紹介されています。白樺文学館やアビスタにもおいてありますので興味のある方はご覧ください。