2016-03-19から1日間の記事一覧

清水正の『浮雲』放浪記(連載190)

平成A年8月31日 富岡が死のうと思ったときは、彼の方からゆき子に速達を出した。わたしはまさかゆき子が富岡の求めに応じるとは思わなかったが、ゆき子は、待ち合わせの四谷見付駅に三十分遅れでやってくる。落ちぶれ果てた富岡に何の魅力があるというのか。…